【LED照明の最先端へ】コイズミ照明が研究開発拠点R&Dセンターを本格稼働 社外向け展示場にも | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【LED照明の最先端へ】コイズミ照明が研究開発拠点R&Dセンターを本格稼働 社外向け展示場にも

R&Dセンター外観。各階のテラスには  樹木を植え、周辺と調和させている

 店舗・施設向け照明分野の強化を図るコイズミ照明が、大阪市東成区に新たな研究開発拠点となるR&Dセンターを本格稼働させた。建物内にはデザイン性や光の品質に配慮した発表前の照明器具を潤沢に使い、「照明の工夫による生産性向上」をテーマに執務フロアの照明を構成した。国際規格の照明制御方式「DALIシステム」に基づく空調などと連動したシステムで、全館の機器を連動制御する。社員自ら照明環境を体感するとともに、社外向けの展示場の役割も期待する。
 R&Dセンターは、マンションや店舗が建ち並ぶ住宅街にある中規模ビルで、商品企画、開発設計、生産管理、品質保証と西日本エリアの営業本部に所属する約200人の社員が働いている。吉久保光宏特機商品部デジタル事業推進室長は「首都圏からも多くの見学者がある。オフィスづくりの参考にするためか再開発地区の中・小規模のビルの設計・施工者や施主が、多い日では5-6組が見学に訪れる」と話す。1、2階が試験室、3階が会議室、4-6階が執務フロアで構成されている。周辺環境との調和に配慮し、階ごとのテラスには地域在来種の樹木を植えた。
 R&Dセンター新設の理由は、LED照明の研究・開発を加速するためだ。東日本大震災後、LED器具への入れ替えが進み、価格競争が激化したため、照明メーカー各社は、電子チップで色や輝度を制御できるLED器具の特色を生かし、自社の特徴を出した性能の照明器具を開発し始めた。同社最新鋭の試験設備をR&Dセンターに集約し、企画・開発から営業までを同居させることで、開発をスピードアップする。
 そうした照明の1つに、執務空間に採用された「ソリッドシームレス ラインシステム」がある。かさはなく、樹脂製のカバーの内側に、すべての器具を入れ込んだ直線的なデザインだ。内部のチップから出る光を均一に照射するように設計し、つなげれば1本の線のように見える。建築空間を邪魔せず、遠近感を出せる器具が欲しいとの設計者側の要望に応えた。

ダウンライトの反射の仕組み

 別フロアでは、丸形のダウンライトを室内用の照明に取り入れた。空調用の丸いダクトと同列に設置でき、これも空間をすっきりさせる効果がある。LED光は直進性が高く、丸形のダウンライトは空間全体を照らすには不向きだと言われてきたが、器具内の反射板で光を複雑に拡散させ、配光角度を考え照射角度を広げた。
 さらに、知的生産性の向上のために注目したのが、時間帯ごとに光の明るさを変える「サーカディアン・リズム」だ。人の身体は、朝から夜までの太陽光の変化で、1日のリズムを作り出す。同社が千葉工業大学の望月悦子創造工学部建築学科教授と共有した検証結果によると、サーカディアン・リズムに配慮した照明の部屋では、ケアレスミスが減少し、ストレス値が小さくなるほか、睡眠効率も上がったという。
 R&Dセンターの照明は、午前8時から9時の間、やや赤みのある色温度3500K(ケルビン)にし、始業から正午までは4000Kに、昼休みの間は再び赤い3000Kに戻す。午後1時から3時の間は、純粋な太陽光と同じ、青みを加えた5000Kに上げ、5時以降からは徐々に赤みを強めていく。「夕方以降は帰宅する雰囲気になり、残業時間が削減した」(吉久保室長)。

丸形ダウンライトを配置した執務室。器具内の  反射板で光を複雑に拡散させることにより空間全体を照らすことを可能にした

 こうした館内の照明制御には、国際基準「DALI」システムを導入した。照明業界には共通の制御システムがなく、各社が別々の制御方式を導入していて、互換性がない。他社に先駆けて国際規格を取り入れることで、将来の優位性を狙う。席に人が不在になると、センサーで照明やスポット空調を消したり、太陽の角度によってブラインドを開閉する。
 同社では今後、社員の実感や業務効率の向上度合いを集計し、結果を新製品に反映させる予定だ。

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