【アジール・フロッタン再生展】修復事業主のデュパール氏がレクチャー | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【アジール・フロッタン再生展】修復事業主のデュパール氏がレクチャー


【近代建築5原則を実践/コルビュジエの美学表す】
 モダニズムの巨匠、ル・コルビュジエの知られざるプロジェクトを紹介する展覧会「アジール・フロッタン再生展」が5日、東京・丸の内のASJ TOKYO CELLで開幕した。遠藤秀平建築研究所が主催、アーキテクツ・スタジオ・ジャパンが共催する。これに先立ち4日には連携イベントとして、 日本建築設計学会主催の「コルビュジエがみた争乱・難民・抵抗」と題したレクチャーとシンポジウムが東京国際フォーラムで開かれ、修復事業主の一人、ミシェル・カンタル=デュパール氏がこの 「浮かぶ避難所(アジール・フロッタン)」が近代建築5原則を実践したコルビュジエの美学を表す作品であることを紹介した。
 デュパール氏は、ブルジョワ住宅であるサヴォア邸が竣工した1928年に設計を依頼された、難民収容のためのコンクリート船改修にも「5原則を適用し、サヴォア邸で使った色彩をそのまま使っている」と貧富の分け隔てなく、快適な居住空間を実現しようとするコルビュジエの建築家としての姿勢に言及。
 特に「ピロティを使うことで天井を高くでき、左右に配された水平連続窓は船底まで明るい光を導く」 としたほか、「コルビュジエが1943年に発表したモデュロールに基づく寸法が至るところにあることを確認した」 などと説明した。
 シンポジウムでは、建築家で展覧会プロデューサーの遠藤秀平神戸大教授と同じくキュレーターを務める建築史家の五十嵐太郎東北大大学院教授、それに文化人類学を専門とする佐藤知久京都市立芸術大准教授の3人がアジール・フロッタンの造られた時代背景とその意義などを論じた。
 この中で佐藤氏は、第1次世界大戦後に各国がナショナリズムを強める中で、亡命者や無国籍者など「例外的な状況に陥った人々」が数多くフランスに流入し「庇護権(アジュールレヒト)」が消滅していった状況を説明しながら「それはいまの私たちが生きる世界の状況とそう変わっていない。アジール・フロッタンは極めてアクチュアルな問題」だと指摘。五十嵐氏も「難民や居住の問題など、いままさに起きているテーマとアジール・フロッタンはダイレクトにつながっている」とした。
 遠藤氏は、震災など自然災害への備えについても問題提起した上で「コルビュジエは社会制度の問題にもアグレッシブに挑んでいる。アジールはその一端を示してくれている」と語った。
 展覧会は22日まで。