【現場最前線】県産材を多用し災害に強い新たなシンボルに 高知市新庁舎建設工事 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【現場最前線】県産材を多用し災害に強い新たなシンボルに 高知市新庁舎建設工事

1万3,307㎡の広大な敷地で工事が進む

 高知市の新たなシンボルとなる新庁舎の建設が大成・大旺新洋JVの施工で進んでいる。1958年に建設された旧庁舎を建て替えるもので、南海トラフ地震などに備え、災害対応拠点としての機能確保を図る。現在は液状化を防ぐための丸太杭を打設する地盤改良が進んでいる。建物では杉をふんだんに使用した市民ロビーや複雑な構造の議場など高い技術力が要求される難関が控えている。大成建設の坂口浩通所長は「自己満足で終わらせることなく、発注者の高知市や市民の方々に満足してもらえる建物を提供する」と気を引き締める。
 高知市新庁舎建設工事は旧庁舎の地下部分の解体から始まり、1次掘削完了後に液状化対策を目的とした丸太杭の打設に着手した。敷地は地下水位が高く緩い砂地盤のため、県産材の杉による直径約160mmの丸太杭を550-1000mmの間隔で地盤に打ち込み、密度の増大を図っている。丸太杭の約8割は全長3.5mだが、最長の個所では4mの杭を2本打ち継ぎ、8mに達する。

専用のアタッチメントを取り付けた杭打ち機で打設する

 敷地全体で1万5700本の丸太杭を打設する計画となっており、5機の杭打ち機で1日当たり100-150本を打設し、6月末現在で約3000本を打ち終えた。「2m掘削すると水が出る」(坂口所長)ほどの地盤のため、山留めにはSMW(ソイルセメント連続壁)工法を採用し、遮水を徹底。さらに排水用の井戸であるディープウェルを5カ所に設け、ドライな状態を保っている。 丸太杭と本設杭の打設後は基礎躯体を構築し、鉄骨工事、地上躯体工事を順次進めていく。「建物の最大の見せ場で施工の難易度が高い個所」として挙げるのが市民ロビーと議場だ。建物東側のメインエントランスに設ける市民ロビーは1-3階まで吹き抜けの開放的なデザインで、壁や天井には熱処理加工された県産材の杉をルーバーとして施すほか、フローリングも杉の圧縮材を活用する。上階まで躯体が構築されるとエントランスが資材の搬入口となるが「仕上げに手間がかかり最後まで残すと工期に影響を与えてしまう。足場を組んで2-3階の繊細な仕上げを進めつつ、1階で荷さばきできる工夫をしなければならない」と効率的な施工に向けて準備を進めていく。
 3階から突き出したデザインの議場は、斜材が構造体として立体的に組み合わさり1つの空間を構築する複雑な架構となっている。坂口所長は「さまざまな角度の部材を組み合わせて構造体をつくり、それを意匠的にも見せる設計なので、全体のバランスをとりながら施工を進めたい」とし、3次元CADなどを駆使して施工の検討を進めるほか、部材は工場での仮組みによる確認を経て現場に搬入するなど品質確保への計画を明かす。

完成イメージ

 また、建物の心臓部となる発電機室や電気室は災害時の浸水を防ぐため6階に配置される。「最後に仕上がる最上階に電気の供給に関わる重要な機械があるため、限られた工期の中でいかに早く仕上げて別途工事の設備工事に乗り込んでもらうかが重要となる」とし、既に綿密な事前調整を着々と進めている。
 高知県に赴任して6年目を迎え、今回が同県で5件目のプロジェクトとなる坂口所長は今後に向けて「責任は大きいが高知市でもメインとなる建物に携われるのは光栄なこと。工事中も市民の方々に身近なイメージを持ってもらう工夫を続けていきたい」と決意を語る。
 高知市の発注による高知市新庁舎建設工事の規模は、RC・SRC・S造地下1階地上6階建て延べ3万2420㎡。地下1階柱頭に免震装置を配置する柱頭免震構造を採用している。設計は日建設計・上田建築事務所JV、施工は大成・大旺新洋JVが担当。工期は16年6月25日から19年6月30日まで。建設場所は高知市本町5-28-1ほかの敷地面積1万3307㎡。6月末時点での進捗率は7%。

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