【物流施設の新規着工】床面積2年連続減、1棟あたりも減少/工事費予定額は大幅上昇 | 建設通信新聞Digital

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【物流施設の新規着工】床面積2年連続減、1棟あたりも減少/工事費予定額は大幅上昇

 近年、EC(電子商取引)の拡大で急増した物流施設を含む倉庫の新規着工床面積が、2年連続で減少している。拡大を続けていた1棟あたりの床面積も縮小傾向で、工事費予定額だけが大幅に上昇している状態だ。1棟あたりの床面積は、運輸業の2024年度問題で中間の中小規模拠点が必要となったことによる影響とみられ、都心部の好立地が少なくなり、工事費が急上昇する中で、物流施設建設市場が地方部の中小規模拠点へと移っている可能性がある。4月30日に国土交通省が発表した23年度計の建築着工統計から、倉庫の着工棟数や床面積、平米単価、1棟あたりの床面積の動向を読む。


 23年度計の倉庫の新規着工床面積は、着工棟数が5.8%減の1万2246棟、着工床面積が7.6%減の1183万5979㎡となった。着工床面積は、18年度から21年度に3年連続で急増し、ピークの21年度は1338万6200㎡となった。コロナ禍と社会でのデジタル技術の普及によってECが急拡大した時期で、大規模な物流施設の開発が相次いだ。

 物流施設専業のデベロッパーだけでなく、大手デベロッパーなどが物流施設開発市場に軒並み参入し、特に都心の高速道路沿線など好立地の確保を競い合った。「23年が供給(施設完成)のピークになるだろう」との声もあったように、供給過剰状態で22年度には好立地の確保が難しくなり、あわせて物価上昇に伴って工事費予定額が急上昇。10年前の13年度には10万円だった1㎡あたりの工事費予定額(平米単価)は、22年度には14万2000円に到達。23年度は、さらに29.7%上昇して17万円にまで達した。

 こうした状況から、22年度、23年度には2年連続で着工床面積が減少した。23年度は、20年度の水準にまで減少した。着工棟数の1万2246棟は過去10年で最低の数となった。

 急拡大を続けた物流施設開発の市場が急激に冷え込み始めたようにも見えるが、ある物流施設専業デベロッパーの幹部は、「国内でもEC市場はじわじわと拡大するだろう。老朽施設の更新需要も底堅い」とし、供給過多となった市場のプレーヤーが工事費の上昇や好立地不足によって整理されれば、工事価格も落ち着き、安定した市場になると見通す。特に、運輸業の24年問題は、物流施設開発に大きな影響を与えているとみられる。

 ある生鮮食品を取り扱う九州の運送会社は、「顧客のニーズの多様化にあわせて小口配送が増えている」と運送ニーズの変化を指摘した上で、「運輸業の『2024年問題』への対応も求められている。運転手が宿泊できる機能を備えた拠点を東京、大阪、福岡に整備した」と明かす。これまでの大型倉庫単独の整備だけでなく、宿泊機能を備えた中小型施設の開発ニーズが高まっている。

 

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