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【現場からアートやオフィスに広がるくさび式足場】ASNOVA・上田桂司社長

最終更新 | 2024/05/08 12:54

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名古屋市でパルクールチームのパフォーマンスに足場を活用してイベントを開催


 くさび式足場のレンタル・販売を手掛けるASNOVA(アスノバ、名古屋市、上田桂司社長)は、足場の社会的な知名度を高めるため、オウンドメディア(自社媒体)「カケルバ」などを通じて情報発信を進めている。これまで足場を知る機会がなかった層との接点が生まれ、足場のプロから見ても驚くニーズを発見することが増えた。足場の新しい接点、新しい価値の発掘について聞いた。

上田社長

◇旺盛な需要、不足する知名度

 上田社長は、父が福井県敦賀市で建機レンタル会社を営んでいた一方、自身は工事用足場に注目し、2013年にASNOVAを設立。マンションや商業施設などの保守・修繕工事による需要が旺盛で、「21年には、100億円相当の足場を保有し、これを150億円相当まで増やせば足りると想定していた。現在は保有量を150億円相当に増やしたが、想定以上の不足感がある」と語る。

 足場の保有量や拠点を増やす中で、旺盛な需要に反して認知度の不足を強く感じるようになった。「建設業界以外の人にとって、建物の完成時に撤去済みとなる足場は印象が薄くなりがちだ。足場がレンタル可能なことや、きちんと管理すれば30年使えることも、あまり知られていない」と指摘する。

◇オフィスや美術展に拡大

 認知度拡大に向けて、カケルバで記事の一般公開を22年4月に開始した。記事をきっかけに足場レンタル事業に関心を持ち、従来と異なる用途で相談を受ける事例が増えた。補強なしの場合、くさび型足場は高さ45メートルまで使用可能で、基本的には顧客の手で組み立てられる。建設関連以外の需要も増えており、新しいニーズを発信している。

足場を使用していたロフトワーク台湾オフィス


 20年5月に稼働を開始したロフトワークの台湾オフィス(台北市)から依頼を受け、ASNOVA提供の足場で大空間を2フロアに区切った。同オフィスが入居する歴史的建造物「華山1914文化創意産業園區」の制約に対応しやすいことや、ロフトワークのメンバー自身が使用場面に応じて改変できることが採用の理由となった(オフィスの移転に伴い現在は撤去)。そのほか、降雪地帯で足場を地面に組み、金属の熱伝導率を生かして融雪を促す顧客など、足場をレンタルする側から見ても驚く用途があるという。

タネリギャラリーの展示、足場を活用し外光を取り入れる


 設計・組み立ての容易さや自由度の高さがあるため、芸術分野からのニーズもある。愛知県瀬戸市の共同アトリエ「タネリスタジオ」が22年7月に完成させたギャラリーや、23年11、12月開催の東京芸大・青木淳教授の退任記念展で、同社は展示空間づくりに使用する足場を提供した。美術展など会期後の原状復帰が必要なイベントでは、足場が空間構築の幅を広げる。

◇子どもが予想外の行列

 一方、類例が少ないゆえの苦労もある。講演会を契機に、21年4月にパルクールチーム「SPEMON(スペモン)」と共同で、名古屋市の久屋大通公園に足場の巨大アスレチックを舞台にパフォーマンスするイベントを開いた。このときは「主催側のこちらも市の担当者も初めてのケースで、内容の説明や安全確保などさまざまなことが手探りで負担があった」と語る。

 オウンドメディアを運営する企業も建設業界では少数派だ。「特定の部署がやっている形では社内に“自分ごと”という空気が生まれず、発信が継続できない。現在は部署、年齢、性別無関係に10人ほどを集めて合宿を開き、京都や岐阜・飛騨高山などに赴き、企画についてガヤガヤ話し合う機会を年に5、6回設けている」「合宿以外にも企画を出すため試行錯誤をしていたが、継続が難しかった」とも。

パルクールのパフォーマンスのあと、小学生が足場組み立て体験に集まった


 ただ、足場の需要と同様に認知度向上の可能性も感じている。スペモンと開催したイベントの例では「パルクールのパフォーマンスの後、足場の組み立てを体験できるコーナーを設けたところ、小学生の子どもが170人ほど行列をつくり、観覧者は約350人が集まった。この関心の高さは想定外だった」と語る。社名の由来「明日の(新たな価値を生み出す)場」の通り、足場の新しい価値を探求する意欲をうかがわせた。

パルクールは基本的に既存の街中や自然の障害物を走る・跳ぶ・登る動作で超えたり、ダイナミックなパフォーマンスを行う。くさび式足場は障害物の高さや長さを調整可能で、パフォーマンスの幅を広げる

東京芸大の展示では、廊下や歩廊としても足場を利用

 

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