【現場最前線】最適工法と情報共有が成果! 三井住友建設 橋脚高さ日本一の「鷲見橋」道路橋 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【現場最前線】最適工法と情報共有が成果! 三井住友建設 橋脚高さ日本一の「鷲見橋」道路橋

地元の未来を託した橋への期待は大きい

 125mという日本一の高さを誇る道路橋「鷲見橋」(岐阜県郡上市)の建設工事が急ピッチで進む。すでに橋脚は立ち上がり、周囲の山々と肩を並べて雄姿を示す。現場所長を務める三井住友建設中部支店の池谷博文鷲見橋作業所長現場代理人は、「地元の方の関心も高い現場だ。事故のないよう工事を進めたい」と力強く語る。
 中日本高速道路名古屋支社が発注した「東海北陸自動車道鷲見橋工事」の施工延長は700mで、上部工は橋長459m、全幅員10.95m、下部工は橋脚3基と橋台2基で構成する。東海北陸自動車道白鳥IC~飛騨清見IC間の4車線化工事の一環として実施する工事で、限られた工期内での着実な施工が求められた。
 工期短縮のために採用した方策の1つが、同社開発の独自技術「SPER(スパー)工法」だ。あらかじめ帯鉄筋を埋め込んだハーフプレキャスト(PCa)部材を工場で製作し、現場では建て込んだ部材の内部にコンクリートを打設するだけで橋脚断面を構築できる。3橋脚のうちP1、P2で導入し、耐久性と仕上がりの美しさを両立しながら鉄筋・型枠の組み立て作業を大幅に省力化、工期短縮に大きく貢献した。
 現在、現場で進むのは「Rap-Con工法」を用いた張出施工だ。波形鋼板ウェブ上に移動作業車(ワーゲン)を設置して張出施工する工法で、波形鋼板ウェブを架設材に利用して作業車の重量を従来工法の60%に軽量化した。また上床版施工、下床版施工、波形鋼板接合の3つの作業が同時に進行するため、作業全体のサイクルを従来工法の80%程度にまで合理化できる。

Rap-Con工法

 山岳地にある現場は国内有数の寒冷・豪雪地帯で、12月半ばから3月末まで長い冬季休止期間が続く。18年末の竣工に向けて池谷所長は「最適な工法を技術提案し、施工性を向上した。売りであるスピードを生かせばより早く安全に工事を進めることができる」と自信をのぞかせた。
 現場はすでに折り返し点を過ぎたが、「1番は安全と品質」という思いは強まっている。全国の注目を集めるプロジェクトで見学者も多いため、「きれいな現場で事故のないよう進めたい」と語る。職員に対しては、他の現場を週に1度はパトロールするよう要請した。各橋脚で複数の現場が同時に進行する現場だからこそ、「各現場に足を運び、それぞれの良さも悪さも共有する」ことが施工品質の向上につながるからだ。「各担当者の色を打ち出すのではなく、お互いが切磋琢磨して良い方向へ向上することを期待している」とその狙いを語る。
 安全を確保するために重視するのは「参加型の現場づくり」だ。供用中の道路橋と隣接する現場だけに、通過する車両や作業員の安全確保のため配慮すべき要因は多い。安全と品質への意識を高めるため、現場内では各所に作業員の写真を使用した安全看板を掲示しているほか、作業員の声を吹き込んだ安全啓発の放送を流している。「事故を起こさないためにはルールを守ることが不可欠だ」とし、「作業員がモデルとなった安全の取り組みを通じ、全員がルールの意味を考え、当事者意識を持って作業にあたってほしい」という強い思いがある。
 高さ日本一への到達を祝い7月に開いた現場見学会では、小学生たちが未来への手紙をタイムカプセルに詰めた。竣工後は橋梁の内部で開封する時まで保存することが決まっている。施工難度の高い現場だが、地元の未来を託した橋への住民の期待を肌で感じるやりがいもある。「地元の方の思いは強く感じる。この大きな期待に応えたい」と語った。

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