【BIM2024②】BIM PLATEAU 不動産ID 三つのDXを連携 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM2024②】BIM PLATEAU 不動産ID 三つのDXを連携

 国土交通省は、BIM、3D都市モデルプロジェクト・PLATEAU(プラトー)、不動産IDの三つのDX(デジタルトランスフォーメーション)の施策を連携した「建築・都市のDX」を推進している。それぞれの施策を掛け合わせたデータ活用が進むことで、建築や都市の3次元モデルや属性情報などの莫大なデータの供給が予想され、まちづくりにおける高度なサービスの提供や政策立案に活用されることが期待される。施策を所管する小善真司国土交通省政策統括官に建築・都市のDXによるデータ活用の道筋を聞いた。
【都市開発、EBPM、新ビジネス創出に効果】

国土交通省政策統括官(税制、地理空間情報)小善真司氏


――建築・都市のDXのコンセプトを教えてください
 国交省は、建築物の形状・材質・施工方法を3次元データ化する建築BIM、都市計画基本図などを基に作成される3D都市モデルの整備・活用などを推進するPLATEAU、土地や建物に固有の識別番号を付与する不動産IDの三つの施策を柱に、各分野のDXを推進しています。それぞれの施策で作成する3次元モデルや属性情報を掛け合わせることで、都市開発の効率化、EBPM(証拠に基づく政策立案)による政策の高度化、新ビジネスの創出の三つの効果を期待しています。
 例えば、都市開発の効率化では、PLATEAUの3D都市モデルを活用した太陽光や気流などの環境シミュレーションが可能です。3D都市モデルとBIMを統合し、部屋の内装や眺望を再現して消費者に訴求することで、マンション販売につなげるなど民間開発にも役立ちます。
 EBPMでは、まちづくりの政策立案や住民の合意形成などに3次元データを活用し、理解を深めることが期待されます。例えば空き家の推計では、住宅に不動産IDを割り振り、市町村が管理する水道データに紐付けることで利用状況が分かります。しばらく使われていなければ空き家と推測されます。さらに推測した空き家情報をPLATEAUのデータと連携、どの地区にどれだけ空き家があるかを可視化できます。
 新ビジネスの創出では、一例として物流効率化があります。自動配送ロボットを活用する際、PLATEAUで道路や都市設備などの地物の情報、BIMで建物情報を取得し、統合することで自動配送ロボットが道路を通って建物に入り、決められた場所に自動で荷物を届けることができるかもしれません。BIMと3D都市モデルとの統合がシームレスな配送の実現につながります。

――具体的に効果が期待されている分野は
 例えば地方公共団体がPLATEAUの3D都市モデルを活用して洪水をシミュレーションする際、地域ごとに浸水被害が何mあるかを想定します。BIMを3D都市モデルに統合すれば建物の階高などが分かるため、洪水が起きたら床上浸水になるか床下浸水なのか被害状況が分かります。そこに不動産IDを割り振ることで、損害保険会社は現地に訪れることなく顧客の被害状況を推計することが可能となり、被災者への支払いの迅速化につながります。
 東京駅周辺の大丸有エリアでは、実在する建物のBIMデータを活用し、地下街の3D都市モデルを再現しました。高層ビルには何千、何万もの人が働くため、災害時の避難経路が極めて重要です。建物のどこを通り、地下街のどの出口を使えばいいのか検討する際、BIMデータを3D都市モデルに統合して建物内外をシームレスにつなぎ、最適な避難経路の検証に活用しています。

――三つのDXが連携する上でポイントは
 PLATEAUの3D都市モデルはLOD(詳細度)が4段階に分かれます。例えば建築物モデルのLOD1は高さ情報を付与しただけのため、直方体のようになりますが、属性情報は付与されており、浸水シミュレーションを行うことができます。LOD2は屋根の形状が入るため、ある地域で太陽光パネルを設置した場合どれだけ発電量を得られるか等を検証できます。LOD3は窓や玄関など開口部の情報が入ります。自動配送技術と連携する際、ロボットが建物の入り口を把握できます。LOD4になると建物内部の構造まで入りますが、これがBIMを3D都市モデルのデータに変換した段階です。BIMと連携することでLOD4のモデルを作成できます。建物内外のシームレスな避難経路の検証や自動配送などを実現できるため、BIMと3D都市モデルの連携は重要です。
 不動産IDはこれらのデータをつなぐキーの技術です。BIMと3D都市モデルをつなぎ、IDを割り振り、いろいろな情報に横串を通すとともにデータを引き出す窓口になります。国交省は地形、土地利用、公共施設など国土に関する基礎情報をGIS形式で無償提供する「国土数値情報」を公開しています。この情報も掛け合わせることで、より高度なシミュレーションが可能です。

――今年度の取り組みは
 一部エリアで、PLATEAUの3D都市モデルにBIMデータを統合し、そこに不動産IDを付与する取り組みを先行的に行い、今後、ユースケースを増やしたいと思います。ゆくゆくは不動産や建設業だけでなくスタートアップなど異業種の企業にデータを活用してもらい、アイデアを出してほしいと思います。
 今後、28年度以降に不動産IDは本格運用を目指します。3D都市モデルは、23年度までに約200都市で整備されましたが500都市の達成を目指しています。BIMも建築確認におけるBIMデータ審査を実施する予定のため、建築・都市のDXが生み出すデータを日本全体で利活用する上で28年度以降が一つのポイントになると思います。
 建設業界も確認申請のBIM活用は大きなインパクトになると思いますが、PLATEAUの3D都市モデルでガスや電気、上下水道などの地下埋設物データを作成する取り組みを23年度から開始しました。地下のインフラを把握でき、現場全体の生産性向上に役立つと思います。都心を中心にデータ作成実証の取り組みを始めたところです。

――データ活用による建築・都市の未来は
 データによって国民の行動変容を促し、社会課題の解決に貢献するのが目標です。一例として、国交省は不動産に関するオープンデータを誰でも簡単に閲覧できる「不動産情報ライブラリ」を4月にオープンしました。例えばコンパクトシティの検討では、立地適正化計画の範囲や、病院や学校の立地などを一つの地図上に表示できます。地価の動向も見ることができ、非常に好評です。既に1000以上の申請が寄せられるなどインパクトを出しています。
 API連携できるため、BIM、PLATEAU、不動産IDなどを結びつけて活用する人が増えると思います。

2022年度には高輪ゲートウェイの開発区域(品川駅北周辺地区)の屋内外シームレスな3次元モデルを整備し、災害時の人流シミュレーションを実施。災害時の潜在的リスクの可視化や避難計画の高度化等に活用



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