【BIM2024③】理解広げオールジャパンの推進 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM2024③】理解広げオールジャパンの推進

三菱地所設計 代表取締役社長 谷澤淳一氏/DX推進部BIM推進室長 山田渉氏

 三菱地所設計は、設計業務にとどまらず、都市など社会インフラ全般の価値向上を見据え、BIMの活用を推進している。谷澤淳一社長と山田渉DX推進部BIM推進室長に今後のBIMの方向性を聞いた。

谷澤社長(左)と山田室長


――BIMの推進体制は

 谷澤 2023年度に立ち上げた技術推進グループにDX推進部を設置し、その中核組織にBIM推進室を位置付けました。将来的に設計の中心にBIMを据えるべく、BIM・DX合わせ、専任14人兼任約30人の合計約40人を配置し、幅広い部署の職員がBIMにかかわる体制を築きました。

 山田 2年前から社内でBIM Boot Campをはじめ、設計者にBIMツールを提供し人材を育成する「BIMチャンピオン」戦略を実施しています。設計者自身がメリットを感じることで周りの人に波及する効果が出ています。

――プロジェクトへの導入状況は

 谷澤 28年の完成を目指し常盤橋で工事が進むTorch Tower(トーチタワー)は、設計から維持管理まで一貫してBIMを活用する計画です。BIMは日進月歩で進化しているため、完成までにさまざまな先端技術を導入する予定です。

 山田 21年に完成した常盤橋タワーではBIMとRFID(電波個体識別)タグをひも付け、機械室の維持管理を効率化する実証実験を三菱地所および三菱地所プロパティマネジメントと行いました。こうした機能をトーチタワーにも活用していきたいと考えています。

――社会インフラとしてのデータ活用の可能性は

 谷澤 BIMは図面作成だけでなく、スマートシティや環境対策などまちづくりを担う社会インフラとしての使い道が広がり、AI(人工知能)などのデジタル技術と連携した活用が重要になっています。当社は三菱地所グループの一員として、大丸有エリアをBIMやPLATEAUを活用して3次元化し、人流、気象などさまざまなデータと掛け合わせてシミュレーションし、まちづくりに生かしています。

 山田 昨年秋に、当社が保管する古図面や最新の図面を用いて、関東大震災前から現代に至る「丸の内ビルヂング」と丸の内エリアをオンライン上で体験するメタバースコンテンツ『4D Marunouchi』を作成し、オンラインゲーム『Fortnite』に公開しました。こうしたコンテンツの作成もBIM化なしにはできなかったことです。 デジタル化が進んだことで建築と他分野を融合できるようになりました。

――BIMの今後をどう展望しますか

 谷澤 BIMが真のメリットを発揮するには、施主、設計者、施工者、ビル管理会社などが連携し、新築からリニューアルまで一気通貫で活用することが重要です。ビル100年時代といわれる中、デベロッパーやビルオーナーだけでなく、企業、自治体などさまざまな施主にBIMで建物をつくるメリットを理解してもらわなければなりません。それには世の中がBIMを当たり前に認識しているぐらい普及する必要があります。
 一方、図面を見たり描いたりすることで養われる設計の勘所を失わないようにしなければなりません。それがBIMを読み解き、業務を効率化するための使い方を見定める力になるからです。海外では既に建築教育からBIMを使い川上から川下までみんながメリットを理解している国もあります。日本が世界から遅れを取らないよう、今が正念場かもしれません。オールジャパンでBIMに取り組むべき時だと思います。



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