【BIM2024④】石井設計 QMS連動で設計プロセス改革/見える化が顧客評価向上に | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM2024④】石井設計 QMS連動で設計プロセス改革/見える化が顧客評価向上に

 国際規格ISO9001の品質管理マネジメントシステムにBIMを位置付ける石井設計(前橋市)。企画・基本設計段階でのBIM使用率は100%となり、実施設計段階への導入も着実に進んでいる。石井繁紀代表取締役は「社を挙げて取り組んだ2020年の設計プロセス改革をきっかけにBIMのステージが一つ上がった」と強調する。

石井氏(左)と金子氏


 同社がグラフィソフトのBIMソフト『Archicad』を導入したのは13年。「新しいモノは積極的に使ってみる」という経営スタンスが根底にあった。「将来を見据えて最初の一歩はとてもスピーディーに踏み出すことができたが、組織として使いこなすまでの道のりは平坦ではなかった。ようやくここまでたどり着いた」と振り返る。

 転機になった20年の設計プロセス改革では、ISO9001に基づき独自に構築した「IQMS(石井グループ品質管理マネジメントシステム)」の中にBIMを明確に位置付けた。第1建築設計部デジタルデザイングループの金子亨グループリーダーは「それによって意匠、構造、設備における設計プロセスの見える化が完了した。まだ完全とは言えないが、ISOの流れに基づきBIMがまわり始めている」と説明する。

 30人を超える意匠担当全員が日々の作業でArchicadを無理なく使えるように現在は20超のライセンスを確保している。21年4月を境に、チームワーク機能がない単体設計用のArchicad Soloライセンスを全てレギュラー版のArchicadに一本化し、組織として共同設計の環境を整えた。「他のBIMソフトも試したが、直感的にデザインできるArchicadの使い勝手の良さが当社にとてもフィットしている」と付け加える。

 設計作業は、設計責任者となるプロジェクトマネジャーを位置付け、その下に補助役を置き、1プロジェクト当たり2、3人のチーム編成を敷いている。 組織全体で各チームの進捗(しんちょく)状況を見ながら仕事をシェアできるように、グラフィソフトのクラウドプラットフォーム『BIMcloud』もいち早く導入した。進行中の再開発事業では最大7人がチームワーク機能でつながる共同設計を実現しているという。

 群馬県内を主に活動する同社では、事務所ビル、工場、生産施設を中心に民間顧客が業務全体の7、8割を占める。近年は実施設計から施工者が参加するプロジェクトも増えており、設計業務の在り方は多様化している。石井代表は「基本設計段階から、より密度の濃い設計成果を示すことが何よりも大切になる。ISOにBIMを位置付けたことで設計プロセスをより見える化できており、その成果として顧客アンケートの評価も着実に向上している」と手応えを口にする。

 顧客との打ち合わせでは、設計担当がArchicadビューアツール『BIMx』を日常的に使っており、顧客側からデータ提供を求められるケースも増えている。金子氏は「顧客が社内説明用にBIMxを使う流れとなっており、それによって合意形成がより迅速になっている」と強調する。

設計者はArchicadビューアツール『BIMx』を日常的に使う


 1920年創業の同社は、これまでに2000件を超える設計実績をもつ。顧客とのつながりを常に大切にしてきた同社では、顧客のリピート率が8割を超えるという。設計監理段階には、作成したBIMを最新データに更新する試みも、同社の顧客に対するきめ細かな対応の一つだ。

 社内では、DX(デジタルトランスフォーメーション)も推進しており、全社員に対するノートPCやスマートフォンなど情報端末の整備も完了した。4月からは在宅勤務も本格的にスタートし、意匠設計部門ではArchicadのチームワーク機能が有効に機能している。

 石井代表は「IQMSにBIMを位置付けることで設計プロセスの見える化が実現し、設計品質の向上だけでなく、業務の手戻り解消にも寄与している。現在はまだ建築確認でBIM化が実現していないように、早急に実施設計まで完全BIM化を推し進めていくことはせず、世の中の動きを見極めながら前へ進んでいく」と語る。同社はBIMの階段を一歩ずつ着実に上っている。

Archicadのチームワーク機能で効率化



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