◇働き方改革進むも設備ひっ迫に懸念
A 建設各社の2025年3月期第2四半期の連結決算が連日発表されている。
B 内容を見ると、損益面や工事採算性の回復基調が鮮明だ。各社とも資材高騰の影響を受けた工事が完全に入れ替わるまであと数年掛かると見るものの、国内建築工事の利益率には底打ち感がある。
C 4月から時間外労働の上限規制適用も始まったが、「問題や混乱は生じていない」「公共工事だけでなく、民間発注工事でも適正工期への理解が進んだ」との声が上がる。
B 資機材価格の上昇に対しても、民間を含めた発注者の理解が進む。一方、設備工事のひっ迫は引き続き懸念材料で、数年先まで手当てできないケースもあるという。
A では、設備系はどう。
D 全体的に好決算だった。電力系・電気設備工事大手5社は、全社が増収営業増益となった。空調設備工事の上場大手6社も、売上高や利益面で過去最高を更新する企業が多かった。生産性向上の取り組み、受注時採算や工事採算改善の進展、発注者の価格転嫁に対する理解が進み、増益となっているようだ。
C ただ、手持ち工事量の水準は各社ともに依然として高い。残業時間の上限規制対応もあり、その消化能力が課題と捉える企業は多い。施工能力の確保や生産性向上を進めようとしている。
B 官民ともに建設投資は活発で、需要は引き続き旺盛だ。働き方改革は強力に進むものの、建設従事者の減少は深刻で、多くの企業が選別受注の状況にある。新技術を駆使した生産性の向上、施工体制の整備、協力会社との連携、人材戦略などの抜本的な見直しを各社とも進めているが、それらの取り組みを現場に反映する段階にあるのではないか。
◇業界熟知する新大臣の手腕に期待
A ところで、11日召集の特別国会で第103代首相に石破茂自民党総裁が指名され、第2次石破内閣が発足した。国土交通相は斉藤鉄夫氏の後任に中野洋昌元経済産業大臣政務官が起用されたが、どういう人柄なのだろう。
E 11年まで国交省職員として働き、土地・建設産業局建設業課の課長補佐などを務めた経歴を持つ。当時は担い手確保や処遇改善といった技能者に焦点を当てた政策を打ち出し始めた転換期で、現役時代を知る記者は、「とても真面目で、スマートに淡々と仕事をしていた印象」と話している。建設業に対する理解も当然あるのではないか。
F 実際に就任会見でも、建設業が「社会資本整備や維持管理の担い手で、災害時の安全・安心を担う地域の守り手でもある。大変重要な存在」との認識を示し、重要課題となっている担い手の確保に向けて全力で取り組む姿勢を強調している。
D 前任の斉藤氏もゼネコン社員を経て議員になった経歴を持ち、建設業への理解が深かった。在任期間中には、建設業法や入札契約適正化法の改正など国会に提出した18本全ての法案を成立させた。防災・減災、国土強靱化のための5カ年加速化対策や持続可能な建設業の実現に向けた環境整備にも尽力した。
F 新大臣も防災・減災、国土強靱化に力を入れる考えだ。11月中にもまとめる経済対策に防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などの関連施策を盛り込むと同時に、新たな国土強靱化実施中期計画の検討も加速化させる方針だよ。
E 能登半島地震の復旧・復興も今後の重要な課題と言える。働き方改革などを含め課題は多いけど、業界の理解者である新大臣の手腕に期待したい。