スポーツブランドを展開するデサントジャパン(東京都豊島区、嶋田剛社長)は、競合ひしめくワークウエア業界にあって、2017年にワークウエアビジネスの専門部署を新設し、法人向けユニホームの本格展開に乗り出した。スポーツで得た知見や作業環境に適した機能性を融合しつつ、「異常気象」「ジェンダーレス」といったキーワードを取り入れた品質追求型のフルオーダーユニホームを提供し、働く人の日常を支える。大手ゼネコンなど建設業界からの採用実績も着実に重ねるデサントマーケティング部門の片山悠ムーブスポーツマーケティング課長と石川裕販売部販売2課長役に躍進の理由を聞いた。
同社は、ハウスブランドの『デサント』のほか、サッカーの『umbro(アンブロ)』や水泳の『arena(アリーナ)』など種目に特化したスポーツブランドを多く抱えることでも知られる。各ブランドが持つ専門性を他事業に応用する手立てを模索する中で、多方面からユニホーム製作を求める声を受け、法人向けユニホーム提案を開始した。今春リニューアルした専用サイトも手伝って全国から多く問い合わせがあり、建設業界からも耳目を集めている。
新規参入から間もない法人ユニホーム事業の安定飛行を下支えするのは、長年スポーツウエアメーカーとして培ってきた独自の品質基準だ。同社はこれまでも、トップアスリートとの共同開発で機能性と品質に軸足を置いたモノづくりを続けてきた。片山課長は「顧客の要望を満たした上で、社内の厳格な基準もクリアする必要がある。製品に対する要求レベルは自然と高くなる」と品質に対する確固たる自負をのぞかせる。
スポーツを通じて得たノウハウは、ユニホーム製作でも大きな優位性につながる。野球のアンダーシャツで活用する特許登録技術「Dスリットカット」は、脇部分に独自のカッティング技術を施すことで肩の可動域を広げて、作業時の動作性を高める。スポーツウエア開発で培った機能素材は、帯電防止をはじめ防水性、通気性、保温性など作業環境に応じた快適さを提供する。社内デザイナーの強みを生かして、要望に沿ったモノづくりを実現する「コンセプトワーク」もユーザーの心をつかむ。カーゴパンツのポケットにスプレー缶が入るようマチを持たせたり、ジャケットの背面にはタブレットを収納するための開閉式ポケット、さらに作業効率を考えてセミロック式のファスナーを採用するなど建設業界はじめ産業特性に考慮したユニホーム作りに努めている。
「異常気象」や「女性の社会進出」といったキーワードも欠かせない。近年災害級といわれる猛暑といった過酷な労働環境に対処する接触冷感機能やジャケットの内側に生理用品を入れる隠しポケットなど、トレンド的な要素もタイムリーに取り入れている。また、スラックスのウエスト部をゴム仕様にして、男女兼用サイズにするといったジェンダーレスユニホームの依頼も増加傾向にあるという。「ユニセックスサイズに集約することで必要以上の生産を回避することが可能となり、その分、環境配慮につながるのでユーザーからの評価も高い」と石川課長役は語る。同社のコンセプトワークは、デザイン制作の面でも大きな役割を担う。「当社のユニホームづくりに共感してくれるのは、『作業服』から『ワークウエア』にステップアップしたいと考える企業」(片山課長)とあって、社員のエンゲージメント向上に寄与するような企業デザインも少なくないという。
今後は、法人向けユニホーム事業として年間10~15%の売上増を目指す。18年に設立したスポーツアパレルの研究開発拠点「DISC OSAKA(ディスク オオサカ)」などから得た知見も生かしつつ、オーバースペックにならないユーザー目線のユニホーム製作を続けていく。石川課長役は「オーダーメードを基軸としつつ、より多くユーザーから届くリクエストに対して、量的にどう対応していくか」と今後の課題も見据えながら、体制の在り方も含めて最適解を探るなど攻めの姿勢でさらなる進化に挑む。
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