安藤ハザマは、2013年の安藤建設と間組の合併後初めて技術研究所(茨城県つくば市)の大規模リニューアルを実施した。社会課題に柔軟に対応できる技術・研究開発をよりスピーディーに進めることが狙い。1月23、24の両日に開いた技術フェアには顧客など800人超を招き、新設した大型三軸振動台、遠心力載荷装置や改修した温熱環境施設などを披露した。谷口裕史執行役員技術研究所長は「社会実装できる技術を生み出していく」と力を込めた。 技術研究所は、1992年に間組の施設として開所。安藤建設と合併後は両社の技術研究所の機能を同施設に集約し、現在は7万㎡を超える広大な敷地に本館と九つの実験棟、屋外実験場などの機能を備え、先進の研究開発に取り組んでいる。
今回の大規模リニューアルの目玉の一つがリアルな地震動を再現して安全性を確かめる大型三軸振動台だ。免震・制震・耐震技術の開発に欠かせない装置で、テーブル上で最大加速度3Gを実現する最新鋭の装置を導入した。長周期地震動(最大速度1秒当たり200cm、最大変位60cm)にも対応しており、建物や設備の耐震性を検証し、企業のBCP(事業継続計画)を強力に支援する。
一方、遠心力載荷装置は、地盤や構造物基礎の挙動を小さな模型で再現する。小さな模型に大きな遠心力を作用させながら、地震や洪水などの自然災害を再現して、インフラの安全性を確認する。実物の挙動を高精度に再現できるダイナミックな実験ができることがポイントだ。
改修した温熱環境施設では、さまざまな気象を再現できる。室内の快適性を検証し、データセンターの建築などにも活用できる屋内環境試験室と、世界各地の気候を再現する屋外環境試験室の2室を設ける。省エネ技術や施工技術の検証に活用し、建築物の品質向上につなげる。
技術フェアは、顧客や技術研究開発のパートナー企業などに同社の最新設備を知ってもらうことなどを目的に、数年に1度のペースで開いている。前回の開催は17年。20年も開く予定だったが、コロナ禍の影響で中止し、今回は8年ぶりの開催となった。
谷口所長は、国谷一彦社長が唱える『品質に徹底的にこだわる』を念頭に、「品質を担保するのは技術だ。従来からの技術を工事の中で伝承することはベースにあるが、新しいものを加えていくことも重要」と述べ、社会課題に対応した技術開発に注力する姿勢を示す。
さらに同社が取り組む次世代通信基盤『IOWN(アイオン)』を活用した建設技術や宇宙開発などで、「共同開発の案件が増えている」という最近のトレンドを説明する。その上で、今回の技術フェアなどをきっかけに「仲間を増やしていきたい」と展望する。既に参加者からは協業の可能性が広がる確かな手応えを得たという。
会場には、安藤ハザマが幹事を務めるCPコンクリートコンソーシアム(CPCC)が協賛する2025年大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」が万博のPRに駆け付けた。
また、1月30日には、初の取り組みとしてメタバース展も開いた。技術フェアでの展示内容をメタバース上で体験できるもので、リアル開催と同様の内容での技術展示のほか、新施設のバーチャルツアーなどのコンテンツを用意した。メタバース会場には説明員アバターが登場し、参加者に各技術を説明した。