◇労務・資材価格上昇、全体のパイ拡大が不可欠/
A 国土交通省が改定した新たな公共工事設計労務単価の適用が明日から始まるね。
B 新労務単価は、全職種で6.0%、主要12職種で5.6%の引き上げとなる。5%以上の伸び率は3年連続で、全職種は過去11年間で最大の伸びとなった。
C 毎年、労務単価の改定に合わせて、国交省と日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会の主要建設業4団体は、技能労働者の賃上げ目標を申し合わせている。実態調査に基づいて設定される新労務単価の数字を見ると、前年目標の「5%を十分に上回る上昇」は無事達成できたと言えるだろう。
B 今年は「おおむね6%の上昇」という、さらに高い目標が設定された。また、「民間工事を含めて」の一文も追加され、公共・民間、土木・建築を問わず、建設業界全体で技能者の賃上げを推進する姿勢が強調された。
D 労務単価の引き上げは13年連続で、単価算出手法を大幅に変更する前の2012年度と比べると、全国の単純平均は全職種で85.8%の上昇となっている。技能者一人ひとりへの行き渡りの問題は別にして、労務単価の上昇はもちろん業界にとって大歓迎だが、建設市場全体を考えると、手放しでは喜べない部分もある。労務費の毎年の上昇に加え、ここ数年は資機材価格も高騰・高止まりしている。単純な話だが、これまで1億円でできていた工事が、1.3億円とか1.5億円ぐらい掛かるようになる。
C その点は業界側もかなり心配している。物価上昇に合わせて予算額という全体のパイが大きくならなければ、事業量や工事件数は明確に減るし、その傾向は既に表面化しつつある。国土強靱化もそうだが、予算の増額要望は今後一層強まりそうだ。
◇衛星取得データで地表面の変化を捕捉
A 強靱化と言えば、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、国交省が21日に再発防止策を議論する有識者委員会の初会合を開いた。
B 同様の事故を防ぐため、重点的に点検する対象や頻度などを話し合い、今夏に最終報告をまとめる見込みだ。
C 日本のインフラストック数は膨大で、特に全国の下水道管きょの延長は計約49万㎞に上り、このうち約3万☆㎞が標準耐用年数の50年を経過している。少子高齢化で自治体の技術職員も不足する中、膨大なインフラの適切な維持管理は困難を極める。全てを人手に頼ることができない今、新技術の活用が欠かせない。
D それでいうと、25日にNTTデータが設立した新会社「Marble Visions」は、世界最高クラス解像度の3次元(3D)情報を取得可能な光学衛星観測システム(小型衛星機)の開発に着手すると発表した。高精度・高頻度に3D地図を作成でき、時系列でデータ確認が可能なため、地面の変化を基に、下水道など都市インフラの劣化予兆の発見に役立つ。
C ベンチャーを含め、さまざまな企業が小型衛星機の開発を進めている。Orbital Lasersは、レーザー技術を応用した衛星搭載型ライダーの開発に取り組んでおり、これも防災・減災に寄与するシステムのようだ。
A 地上の目に加え、空の目を有効活用する時代がきているということだね。
B インフラ老朽化対策は避けて通れない。しかし、予算がなければ、せっかく生み出された技術や方策も定着しない。適正管理には、相応の予算が必要だという認識を一般化させることが不可欠だ。一方で、経済成長などに資するインフラ新設にしわ寄せがきては元も子もない。やはりパイの拡大が欠かせない。