【「群れ」が進める現場作業】作業分割しロボ化/テムザック | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

公式ブログ

【「群れ」が進める現場作業】作業分割しロボ化/テムザック

SPD-Xを持つ川久保社長

 建設・農業・医療などの分野でサービスロボットを開発するテムザック(京都市、川久保勇次社長)は、複数のロボットを制御する「群制御」の技術を生かし、建設現場のロボット化に取り組んでいる。川久保社長は、複雑な作業を分割し、機能を限定したロボットを複数導入し「群れのように連携させて、一つのミッションを実行する」ことをポイントに挙げる。エッジAI(人工知能)など関連技術の進歩や人手不足といった需要を踏まえ、ロボット化できる領域の拡大を見込む。

◇受付用ロボットが由来

 テムザックは2000年に設立された。由来は、食品工場向け機械メーカーのテムスが技術力をデモンストレーションするため開発した受付・警備用ロボット『テムザック1号機』。同機が注目を集めたことを契機に、ロボット部門を別会社化して発足した。これまで40種類以上のロボットを開発しており、その技術のライセンス提供を主な事業とする。

 ロボットの用途や機体のサイズは多岐にわたる。2本の腕でがれきを除去する災害対応用の『T-54援竜』は小型建機並の大きさだ。対して雑草抑制用の農業ロボット『雷鳥1号』は人が手で抱えられる程度のサイズとした。

◇分担がロボット化のかぎ

 建設現場で人間の技能者の動きを再現するため、1種類のロボットに多種の作業をさせようとすると、機体が大型化しがちで開発や搬出入が難しくなったり、導入・修理のコストが高まるなどの課題が生じる。それらを、同社は複数のロボットによる作業分担で軽減する。

 具体例には、テムザックが鹿島と共同で開発を進める『システム天井施工ロボット』がある。同システムでは6台のロボットがオフィスビルの天井を施工する。施工作業をつりボルト、Tバー、天井ボードなどと分割し、各工程をロボットが分担する。作業用のロボットと、そのロボットを乗せて移動する台車ロボットも分けている。

 ロボットの連携にはエッジAIを使用。各機体による自律的な状況の把握・共有を可能とすることで、状況がさまざまに異なる現場への導入を容易とする。

システム天井施工ロボットでは、6台のロボットが連携してオフィスビルのシステム天井を施工する


◇水道管内でも群れで稼働

狭小空間を進むSPD-X

 開発中の小型ロボット『SPD-X』も、カメラやセンサーなど作業用機器と、それを載せて管内を走行する移動用のベースマシンを分けている。水道管やガス管などに入り、管内の検査・修理などを行う想定だ。対応できる管径は最小で直径200ミリ。「まずカメラなどを搭載した1台目、検査機器を搭載した2台目を投入する。要修理箇所が見つかれば、3台目に修理用の機器を搭載して追加投入する」など、状況によって機体の数や搭載機器を使い分けるのが将来的な運用イメージだ。同社は、複数の機体を1人の操縦者で制御するソフトウエア開発も手掛けている。

 SPD-Xは、下水道関連企業からの意見を基に、ベースマシンの性能にもこだわる。従来の水道管検査用ロボットの多くが車輪による移動を採用しているため、管内に段差や堆積物があったときに停止してしまう課題があった。対して同機は16本の脚により走破性を高めて、段差や堆積物にも対応する。機体へつなぐ制御・給電用ケーブルが100メートルに及ぶこともあるが、それを引きながら走行するけん引力も備える。各種の管内以外の狭小空間での作業ニーズも探る。

SPD-Xに先だって開発したロボット「SPD1」。すでに役割分担を念頭に置いている


◇ここ数年で急激に進歩

 長年ロボット開発に携わってきた川久保社長だが、「ここ数年でロボットにできることが急激に増えている」と近年の進歩を強調。主因に、エッジAI、画像認識やSLAM(自己位置推定)の進歩による自律運転能力の向上を挙げる。さらなる活用領域の拡大を見据え、「以前のロボットが応えられなかったニーズでも、ぜひ相談してほしい」と力を込める。

 

【公式ブログ】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら