東京理科大学は22日、同大と高砂熱学工業、大和大学ほか6機関からなるプロジェクト「TEAM SPACE LIFE(TSL)」の開発による小型自律分散型環境センサー(TEM=TSL Environment Monitor)2台が、日本時間4月21日午後5時15分、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから、米スペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げられたと発表した。TEMは、スペースX社開発の無人商業輸送機であるドラゴン補給船に搭載。国際宇宙ステーション(ISS)に輸送後、TEMで船内の空気環境を測定する軌道上実証を実施するという。
ISS内の空気環境モデル化や測定計画作成を高砂熱学工業、測定結果を基にした行動心理学的評価を大和大、全体の取りまとめを東京理科大が行う。今回の成果をフィードバックし、今年度中に追加で2台を軌道上へ送り、再び実証実験を行う計画だ。
宇宙船や宇宙ステーションのような閉鎖環境では、呼吸用の酸素を供給し、呼吸で排出するCO2を回収し続ける必要がある。そうした宇宙の有人環境で最も注意が必要なのが、CO2の濃度だ。これが高すぎると、意識レベルの低下など深刻な健康被害をもたらす恐れがある。
自然対流で空気が循環する地上と異なり、ISSのような微小重力環境では密度の違いによる熱対流が起きにくく、呼吸で排出したCO2が宇宙飛行士の周りに滞留しやすい。船内の各種装置などが障害物となって空気流に影響する可能性も考えられるものの、実際の空気の流れがどうなのかも、よく分かっていないのが現状だ。
そこで今回の実証を行う。TEMは、バンダイナムコグループが進める「ガンダムオープンイノベーション(GOI)」の公認プロジェクト・TSLとして支援を受け、東京理科大のスペースシステム創造研究センター主導で開発された手のひらサイズの小型センサー。CO2濃度や温度、湿度、におい成分などを計測できる。自律動作で宇宙飛行士の手間がかからず、複数台のセンサーで空間全体の空気環境を把握できる点などが特長だ。ガンダムをイメージしたデザインにした。
これをISSの日本実験棟「きぼう」に設置し、空気環境のデータを取得する。基礎データとして活用し、空気環境モデルの精度を上げることで、空気の流れのより正確な予測が可能になる。これらは将来、ガンダムに登場するような大きな宇宙船やスペースコロニー(宇宙空間に建造される人工居住区)の実現にもつながる技術と期待される。
TSLは東京理科大、高砂熱学工業、大和大、有人宇宙システム、NTTデーSBC、avatarin、理研計器、国際医療福祉大、バンダイナムコ研究所の全9機関で構成している。