【記者座談会】都心部交通網の再整備が着々/福井県が最低制限価格の上限引き上げ | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

公式ブログ

【記者座談会】都心部交通網の再整備が着々/福井県が最低制限価格の上限引き上げ

◇フロー・ストック効果にも期待

田町駅の線路切り替え工事は約35時間に及んだ。羽田空港アクセス線は31年度開業予定


A 東京都心部のネットワーク再編へ、各所で大規模事業が動き出している。JR東日本は19日から20日にかけて、羽田空港アクセス線の整備に向けた線路切り替え工事をJR田町駅周辺で実施した。

B 一部時間帯では、両側の線路を営業しながらの施工となったこともあり、約1500人を動員しての綿密な工事になった。東山手ルートの整備に向けた初弾の切り替え工事としても意義深い。開業予定の2031年度が近づくにつれ、周辺の景色も変わってくるだろう。

C 道路網の整備も進んでいる。5日には新京橋連結路の構築のため、高速八重洲線が約10年に及ぶ長期通行止めに入った。

D 同日には東京高速道路(KK線)も廃止になった。自動車専用道路だったKK線が、今後は歩行者中心の新しい公共空間に生まれ変わるというから驚きだ。

B 都心部の立地ということもあり、小池百合子都知事も観光地としてのポテンシャルに期待を寄せているようだ。デフリンピックのマラソン競技への活用や各種イベントなど、既に新しいまちづくりへの機運が高まってきていると感じるよ。

C 東京駅から臨海部へ延びる新たな地下鉄構想も、40年ごろの開業へ事業計画が検討されている。都心部のネットワークはこれから10年、20年先へめざましい変化を遂げるだろう。今はその大転換期の入り口にあるのかもしれない。

D 世界に目を向けると、トランプ米政権の関税措置によって経済的な動揺が広がっている。大規模プロジェクトは、足元の経済対策としての内需拡大に寄与するし、その結果として完成した基幹インフラは、経済の活性化を後押しし、国際競争力の強化にもつながる。堅実な一手と言えるね。

◇算定式が充実しても“頭切り”を懸念

A ところで、福井県の入札制度改正は、良いニュースだったね。

B 5月以降、最低制限価格と低入札調査基準価格の上限値を予定価格の「92%」から「94%」に引き上げる。多くの公共発注機関が準拠する中央公契連モデルは上限値が92%。国土交通本省内からは、同モデルより高い下限値や上限値の設定は、ダンピング(過度な安値受注)対策の観点から歓迎で、どんどんやってほしいとの声が聞かれた。

C 低入札調査制度などは、予定価格に対する設定範囲や算定式が段階的に改正されてきた。算定式は現状、直接工事費が97%、共通仮設費と現場管理費が各90%などとなっているが、これらの率が引き上げられてきた結果、案件によっては計算式上、予定価格の92%を超える調査基準価格が算出されているのに、上限値の規定によって“頭切り”されるケースもあるそうだ。

D 業界からは、現状68%と算入率が低い一般管理費率の引き上げを求める要望が挙がっているが、実現したとしても上限値が変わらなければ、せっかくの引き上げ効果が隅々まで行き渡らない。

C 予定価格の上限拘束性の撤廃を求める声も根強い。ただ、現実問題として、会計法という岩盤を打破するのは容易ではない。この問題には、佐藤信秋参院議員が一生懸命だが、間もなく引退してしまう。この点、後継者として参院選に出る見坂茂範氏は、直轄の入札契約制度を所掌する技術調査課長の経験もあり、引き続き期待はできそうだね。

D 最近、業界内からは、賃上げの好循環などに関し、入札という仕組みそのものを疑問視する意見も出ている。労務費を含む工事に必要な各種金額を積み上げ、発注者が積算したのが予定価格だが、入札によって受注金額はそれを下回るのが必然。行き渡りのスタート時点から原資が削られているという主張だ。

 

【公式ブログ】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら