【日本橋・首都高地下化】1.8㎞道路更新と景観改善プロジェクト 完成迎える40年代の日本の姿は? | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【日本橋・首都高地下化】1.8㎞道路更新と景観改善プロジェクト 完成迎える40年代の日本の姿は?

 東京・日本橋の首都高速道路を地下移設するプロジェクトが、実現に向けて動き始めた。わずか1.8㎞の道路更新と景観改善を目的とした事業だが、想定工期は約20年と長い。さらに、営業中の地下鉄などさまざまな既設地下構造物に近接する施工を強いられ、周辺の再開発事業との調整も必要など、施工の難易度は高い。その一方で江戸橋JCTの見直しに伴う大型車の交通ルート確保など、大きな検討課題も残されている。

遊覧船から見た日本橋川の現況と工事完了後イメージ(東京都環境局HPより引用)

竜閑さくら橋の現況と工事完了後イメージ(東京都環境局HPより引用)


◆新技術の投入も
 首都高速道路会社などは、トンネル工事だけで10年の工期を見込んでいるが、ゼネコンでシールド工事に携わった技術者は「くしゃみ1つできないのではないか」と語る。シールドマシンの制御技術やトンネルの施工技術は、時代とともに高度化してきたものの、地下鉄や地中構造物の多さからシビアな施工管理が想定される。ICT、センシングなど持てる技術を最大限に駆使して施工に臨むことになりそうだ。現時点では日の目を見ていない新技術が投入される可能性は高い。
 一方で、予測やコントロールが難しい不安材料もある。計画地はいわゆる「江戸遺跡」の範囲内にあり、周辺には35件の埋蔵文化財包蔵地が存在している。新たな埋蔵文化財などが出土すれば、スケジュールに与える影響は少なくない。
 20年という長い工期には、既設高架橋の撤去期間が含まれる。新線の整備・接続を終え、既存高架を撤去することでようやく完成を迎え、日本橋に日が当たる。全体完成は2040年代となりそうだが、このプロジェクトに一気通貫で携わることができる担当者は、官民双方でもごくわずかだろう。マネジメントやノウハウの継続・引き継ぎは、長期プロジェクトに特有な課題でもある。

◆大型車の交通確保
 一方、大型車の交通対策が大きな検討課題として立ちはだかっている。日本橋エリアの地下化にあわせ渋滞対策として江戸橋JCTの環状線ランプを撤去する計画だが、これによって大型車の最短ルートが失われることになる。
 現在、国土交通省の検討会議が具体的な検討を進めている。選択肢は、東京高速道路(KK線)の構造を強化して大型車に対応する案と、地下などに別線を整備する案の2つ。これまでの検討では別線整備案がやや有力とみられ、「既設八重洲線を活用しつつ、KK線の下を通過させることで、都心環状線に接続する最短ルートの導入空間を確保することが可能」としている。

別線整備(地下)のイメージ(国交省検討会資料より)

 ただ、日本橋エリアの地下化と同様に地下埋設物との近接・干渉が課題となるほか、築地川区間の大規模更新事業との整合も求められる。事業費に話題が移れば、さらに頭の痛い問題となりそうだ。

◆未来技術、どう織り込む
 官民双方がさまざまな困難を克服しなければ、このプロジェクトの実現・成功は難しい。直面する困難の種類や度合いこそ異なるが、リニア中央新幹線と同様に『黒部の太陽』を引き合いに出す声もある。
 全体完成を迎える40年代の日本が、どのような社会・経済情勢に包まれているか想像するのは難しい。関係者の間では、「その頃には、自動車が空を飛んでいるのではないか」との冗談も飛び交う。しかし、それもあながち冗談ではない。
 MaaS(モビリティーのサービス化)や自動運転技術の進展といった動きを、どのように織り込むべきか。将来的な技術の進化を想定し、どこにどのような余地を残しておくべきか。国交省の懇談会で座長を務める石田東生筑波大特命教授は、6月の会合で「MaaSをソフトと決めつけてはならない」と指摘。MaaSのような新たな動きを受け止めるハード整備や空間の関連性が重要だとの考えを示した。
 令和を代表する都心土木プロジェクトは、未来技術に対する想像力さえも求めてくる。

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