【記者座談会】東京高速道路(KK線)の方向性固まる | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【記者座談会】東京高速道路(KK線)の方向性固まる

A 東京都の「KK線の既存施設のあり方検討会」が東京高速道路(KK線)の将来像について素案をまとめた。首都高速道路の日本橋区間地下化プロジェクトに伴う新たな都心環状ルートの整備方針を受け、KK線は自動車専用道路としての役割を終える見通しだ。今後、どんな活用を想定しているのかな。
B 既存の高架を活用して路面を緑化し、歩行者向けの施設に用途転換する方向が固まった。再整備に向けては、いままでの沿道建築物や道路周辺で検討中のまちづくりなどとの連携も想定し、人と緑の共存のシンボルとなるグリーンインフラの形成を目指す。緑豊かなオープンスペースを設けるほか、次世代モビリティーの活用なども視野に入れている。
C KK線は全長2㎞の自動車専用道路で、1966年に完成した。敷地は東京都が所有する一方で、高架などの構造物は民間が所有し、高架下のテナント収入などで建設費や道路の維持保全費を賄うというユニークな手法を採用した。いわば独立採算型PPPの原型でもある。ある意味、当時だからこそ可能だったダイナミックな事業スキームかもしれない。
D 銀座周辺エリア全体を俯瞰(ふかん)したまちづくりの観点では、KK線はあくまでパーツの1つに過ぎない。地元の東京都中央区では、KK線に加え、大規模改修する都心環状線・築地川区間の上部に人工地盤を整備して緑道化する計画を検討している。それらが全てつながり、銀座エリア外周部にリング状の緑地帯を整備する「緑のプロムナード」構想が実現する。

「緑のプロムナード」を想定するKK線の活用イメージ(数寄屋橋交差点付近)

◆沿道周辺まちづくりとも密接な関係

B 話はそれだけではない。KK線、築地川区間ともに沿道周辺では複数の再開発事業が計画中だ。再開発事業では容積率アップが事業採算性を大きく左右する。その一方で、道路の更新には莫大な費用がかかる。現時点ではそれほどクローズアップされていないが、将来的には道路構造物上部の容積率をどう活用するかという議論が再燃する可能性もある。いわゆる「空中権」の話で、開発事業での容積率移転の前例はいくつもある。
C 少し古い話だが2013年6月、当時の太田昭宏国土交通相は築地川区間と周辺地区を視察している。同省は当時、道路の空中権を活用した周辺の民間都市開発と、首都高の更新費を捻出する検討に着手した。首都高や周辺建物の現状説明を受けた太田国交相は、記者団に対して「首都高の老朽化対策と空中権を使った都市再生を一緒に行うことは、世界の都市間競争に向けた東京をつくるためにも有効だ」と述べ、空中権利用についても「実現性は十分にある」と話した。
D 周辺まちづくりに関しては、築地川区間の目の前に立地する中央区役所が、新庁舎建設の検討を進めている。現時点では移転改築の方向が濃厚だが、跡地をどう活用するかに注目が集まりそうだ。一方、区庁舎の南西側の沿道では、丹下健三が設計した旧電通本社ビルなどのエリアで再開発構想がある。
B 全ての起点となっているのは首都高速道路日本橋区間の地下化プロジェクトだ。地下化の実施決定を契機として、都心環状線の別線整備、KK線の廃止・緑道化、築地川区間上部を含めた緑のプロムナード構想など複数の大型プロジェクトが本格的に動き出すことになった。周辺まちづくりも含め、それぞれのプロジェクトは密接な関係にあり、点が線、あるいは面につながることになる。
A 日本橋は、江戸幕府による五街道の起点として機能した。令和の時代には、連鎖型大型プロジェクトの起点にもなりつつある。そう考えると感慨深い。

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