【記者座談会】マンション、ガソリン価格上昇/斬新な技術を投入するスタートアップ | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【記者座談会】マンション、ガソリン価格上昇/斬新な技術を投入するスタートアップ

◆広がる物価高、商慣習を変える好機

A 不動産経済研究所が先週発表した、7月の首都圏の新築分譲マンション市場動向には驚いた。平均価格が前年同月比で55%も増え9940万円だった。東京23区だけで見ると、84%増の1億3340万円で1億円を超えていた。

B あくまでも平均だから、超高級マンションが価格全体を押し上げたのだろう。しかし1億円超えとなると、われわれ庶民にはとてもではないけれど、23区内のマンションには手を出せないよね。

C 値上がりしているのはマンションだけではない。ガソリン価格も驚きだ。全国平均の小売価格が180円を超えている。9月末の補助金打ち切りで200円台突入も予測される中、岸田首相はその対策を8月中にまとめるよう指示した。9月には経済対策をまとめることも22日の会見で明らかにしている。

D 物価高で国民生活は困窮しており、当然の指示といっていいだろう。ただ、この物価高はこれまでの状況を変える事態をもたらしている。例えば、設備工事業もその一つだ。これまでは、価格転嫁をお願いしても難しい状況にあったようだが、最近ではこれだけの物価高を受けて、元請けのゼネコンを含む発注者などの理解も進み、前より価格変更を受け入れてくれる状況に変わってきたという。

B 従来の商慣習から考えたら、ある意味、千載一遇のチャンスかもしれないね。

D まさにそのとおり。これからは、担い手確保や生産性向上などに必要な原資をしっかりと確保しなければならない。そして給与の引き上げや休暇の確保などを実現し、建設業を持続可能なものにしていく必要がある。そのためにも、過去に散見されたような過度な安値受注があってはならないし、対等な取引関係を築いていけるかが鍵を握るだろう。

さまざまな物価の値上がりが続く中、都内では人影のない深夜も工事が続けられている

参入増加し建設業の在り方変える

A 話は変わるが、今夏、経済産業省主催の「日本スタートアップ大賞2023」に国土交通大臣賞が新設され話題になった。

B 国交省はインフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めていて、既存の枠組みと異なる発想から斬新な技術を投入するスタートアップ(新興企業)への期待も大きいよね。

C 民間では大手ゼネコンをはじめ、AI(人工知能)など先端技術で業務の自動化などを加速している。スタートアップと対等な関係で技術開発するケースも増えている。

D 企業規模ではなく、純粋に技術力を評価する機運が高まっていると感じる。学生が立ち上げたスタートアップが大手ゼネコンや設計事務所と協業するケースもあり、それだけ新しい技術を取り入れることに意欲があるのだろう。

C あるスタートアップ創業者によると、今はゼネコンが日参するほどアプローチを強めているが、10年以上前は、大手ゼネコンに話を持ち込んだ際、「省人化したら働く人が職を失うから必要ない」と体良く追い払われることも多かったそうだ。当時を思うと隔世の感がある。

D コロナ禍で一般化したリモートワークなどで建設業界でも遠隔作業が普及し、業務のIT化に自信を深めただろうし、ITも進化している。建設業を対象にしたAIの技術者いわく、「巨大な構造物をつくる建設現場はデータの宝庫で分析しがいがあるし、稼げる」そうだ。意外にも建設現場とAIは相性が良く、ブルーオーシャンになっている。

A IT化が遅れた代表的業界と言われた時代から考えると、信じられないほどの変化だ。技術の進歩はそれほど大きな力を持っている。今後もスタートアップの参入が増え、建設業の在り方を変えていくのだろう。

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