改善加速も約4割未達/関連産業の影響が表面化/日建連調査/上限規制原則ルール | 建設通信新聞Digital

5月3日 土曜日

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改善加速も約4割未達/関連産業の影響が表面化/日建連調査/上限規制原則ルール

時間外労働上限規制の順守状況
時間外労働上限規制の影響
 2024年4月から適用が始まった時間外労働の上限規制。特別条項の順守は最低限のものとして、担い手確保・定着などの観点を含め、次なるターゲットとなるのが、時間外労働を月45時間以内、年360時間以内に収める原則ルールだ。日本建設業連合会(宮本洋一会長)が実施した土木工事に関する最新のアンケート調査によると、前年より大きな改善は見られるものの、約4割の現場で原則ルールを守れていないことが分かった。また、生コンクリートやクレーンなど関連他産業の働き方改革の影響が表面化し、コストアップや作業時間の制約が生じている。 アンケートは、23年10月から24年9月までに竣工または施工中の3億円以上の土木工事を対象とし、24年11、12月にかけて実施した。対象期間の半分には、上限規制の適用前が含まれている。
 調査結果によると、月45時間以内をクリアできなかった元請け職員がいた現場は、全発注機関1465現場のうちの39%を占めた。ただ、前年は約7割が未達だったため、労働時間規制の実適用を契機に、改善傾向は加速していると評価できそうだ。
 国土交通省直轄工事(道路・河川)計223現場の状況を見ると、原則ルールの未達は37%で、前年より31ポイント改善した。地方整備局ごとに多少のばらつきはあるものの、総じて改善傾向にあり、中部や四国は未達が10%台と特に少ない。工事関係書類のスリム化ガイドラインの周知徹底やウイークリースタンス・ワンデーレスポンス、書類限定検査の適用、現場の土日閉所などが進んでいる。
 このほか、未達の割合は、地方自治体が約3割、民間鉄道、電力会社が約4割、高速道路会社が約5割などとなっており、いずれも20、30ポイントの改善が見られた。
 時間外労働の削減に必要なことは、「当初発注における適切な工期設定」が最多で、「条件変更に伴う適切な工期延期」「精度、質の高い設計図書」「提出書類の削減」「施工加速化対策の導入と設計変更での対応」「間接工事費率の引き上げ」を望む声も多い。
 一方、建設業だけでなく、工事に必要な資機材搬入を担う運輸業への労働時間規制適用の影響も表面化している。物流コストの上昇に伴う資機材価格の高騰や搬入・搬出時間の制限が生じているほか、生コンクリート打設やクレーン作業の時間制約によって、コストや工期への影響も拡大しつつある。
 関連産業への規制適用の影響を聞いたところ、4割近くの現場で資機材や運搬費のコストが上昇し、約2割の現場で資機材の納入日や納入時間の指定が難しくなっていた。資機材・運搬費は1、2割上昇したとする現場が多い。
 日建連会員企業からは、上限規制の影響を考慮した積算基準や歩掛かりの見直しを求める声が多く上がっている。当初からの余裕を持たせた工期設定、柔軟な工期や請負代金の契約変更、運搬車両の待機場所となるヤードの事前確保を求める意見も出ている。