【BIM2025⑲】LUS.1×キャパ 一から作る協創のシステムづくり | 建設通信新聞Digital

7月11日 金曜日

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【BIM2025⑲】LUS.1×キャパ 一から作る協創のシステムづくり

BIMデータを利活用する時代が色濃くなってきた。企業同士の連携によって多様な要求に応える「協創」のBIMコンサルティングサービスを掲げるPLUS.1は、高度化するシステム開発の強力なパートナーとして、キャパとの連携を重要視している。PLUS.1の高木 英一CEOとキャパの佐藤暁取締役開発統括責任者は、急速に進展するBIMデータ活用の流れをどう見ているか。両社の進むべき道筋を聞いた。

高木氏(左)と佐藤氏

データ連携のルール決めが出発点

 ――BIMデータ活用のトレンドは

高木 国土交通省はBIMデータの標準化に向けた整備に着手し、BIM確認申請にも乗り出そうとしている。企業のBIM活用ではクラウド上でデータを共有する流れが広がり始めている。蓄積したデータをどう有効に活用していくかという部分のシステム開発がより求められる。

佐藤 キャパはCAD・BIM・CIMソフトウェアのカスタマイズ開発をメインに事業展開している。2020年ごろから建設分野にシフトし、BIMへの対応を強化してきた。以前は製造業からの仕事が大半だった。現在は売り上げの7、8割を建設分野が占めている。年間50社ほどと仕事をしており、年間プロジェクト数は200件近くに達する。

高木 CADのデスクトップ開発はもちろん、クラウドやウェブ系のシステム開発にも強いキャパはBIMデータのあり方を熟知し、どのようにデータを連携して管理すればいいか、最適な枠組みをシステム化することを得意としている。高度なBIMデータ活用の要求にも柔軟に対応できる国内でも数少ないシステム会社だ。

佐藤 現在は50人体制で活動しており、このうちエンジニアは40人ほど、協力会社も含めれば60人体制を確保している。お陰様で建設分野を中心に相談が増えており、そのすべてに対応できない状態になっている。協力会社との連携を拡充し、システム開発の体制をさらに強化していく。

高木 BIMデータをクラウド上で利活用しようというニーズは一気に高まっているが、様々なユースケースに対応できるクラウドシステムは存在しない。CDE(共通データ環境)はデータ活用の目的に合わせて構築する必要があり、どのようなデータと連携するか、その枠組みに合わせたシステム開発やカスタマイズが欠かせない。BIMコンサルティングを進める中で高度なシステム開発の要求は増えているだけに、キャパはわれわれにとっての最適なパートナーになる。

キャパのAPSを利用したWeb CADアプリケーション

 ――データ活用事例は

佐藤 統合BIMモデルから省エネルギー性能値を抽出するウェブシステムの開発を依頼されたケースでは、設計者がBEI(ビルディング・エネルギー・インデックス)を導く独自処理をしている部分をロジックに落とし込み、自動化を実現した。組織設計事務所のように意匠設計、構造設計、設備設計の部門が連携するような場合、チーム内で情報連携する流れになるが、データ入力などの役割分担が曖昧なケースがあり、情報共有時にタスクの取りこぼしがないようにデータを一元管理する部分が重要になる。

高木 データの一元管理は一筋縄ではいかない。とても高度な技術力が必要になる。近年は、どの企業もクラウドをデータの保管庫のように使うケースが多い。そこにあるデータをきちんと使おうとすると、なんらかの処理が必要になる。BIMデータを省エネ計算や積算などに活用する自動化の流れも広がろうとしている。まさにキャパが大いに活躍する時代になっているのではないか。

佐藤 openBIMを指向する企業も増えている。そうした企業ではRevitやArchicadなど複数のBIMソフトが使われている。それぞれのソフトから出力したIFCデータを「IFC・JS」というJavaScriptベースのライブラリを使って取り込み、ブラウザー上で表示や操作を可能にした事例などもある。

高木 当然ながら顧客はベストのやり方を求めてくる。これまで取り組んできた成果をさらに発展させたいという思いを強く持っているが、中には社内の枠組みが標準化とはかけ離れるようなケースもあり、業務フローや組織のあり方を抜本的に再構築するケースも出てくる。企業が独自で定めたBIMのルール設定が世間とかけ離れているケースも多く、これまでの取り組みを否定するところからコンサルティングがスタートする場面も多々ある。

佐藤 データが標準化されていない企業では、データの設定方法や保管場所などが曖昧なケースが多い。われわれもシステム開発を進める際には、データ連携のルール決めから始めている。これまではシステムの自動化ニーズが多かったが、最近はデータを後工程にどう生かすかという業務フローに沿った要求が増えている。全体を通してシステムを仕上げる流れが主体になり、エンジニアが求められる難易度も上がっている。経験豊富なPLUS.1にシステム開発の方向性をきちんと示してもらうことができれば、われわれは強みのシステム開発の部分に集中できる。

高木 企業の課題抽出や目的の設定部分をPLUS.1が担い、より専門的なシステム開発の部分はキャパのようなスペシャリストと手を組んでいくことが最適なコンサルティングサービスに結びつくと考えている。協創の枠組みでは実装したシステムを活用するためのトレーニングや人材提供、教育サポートなどの領域でも強みをもつ企業との連携を考えており、課題に合わせて最適なパートナーと連携していく。

佐藤 PLUS.1は中立性を重んじたBIMコンサル会社であり、より的確な方向付けをする存在だ。フラットな目線からBIMの標準化を追求するPLUS.1の姿勢に私自身も共感しており、強みをもつ企業同士がコラボレーションする協創の考え方にも賛同できる。PLUS.1との連携をきっかけに幅広く事業展開していきたい。

高木 BIMの裾野は確実に広がっている。企業は複数のツールを使い、様々なデータを蓄積している。BIMコンサルティングをする中で、当社だけでは解決できないケースも多く、中には別のソリューションや企業との連携が必要な場合もある。皆が強みを持ち寄り、連携しながら課題解決していくBIMのプラットフォームを構築したいと考えている。

佐藤 キャパにはいろいろな技術に精通したエンジニアがいる。ひとつのシステムを作るにしても、様々な技術ノウハウを生かして最適なシステムを作れる点が当社の強みだ。当社は自社製品を持たない。いわば製品を売るためにコンサルティングする会社ではなく、顧客が求めるものを一から作っていくことにこだわっている。

高木 PLUS.1も同じ考え方をしている。われわれがコンサルティングする課程で、こんなシステムがほしいという要望をもらうケースが多い。当社は業務改善を軸にしたコンサルティングを主体に活動しているため、より高度なシステム開発については外注して取り組むケースが多い。現在いくつかの企業からシステム開発の相談があるだけに、ぜひともキャパの力をお借りしたいと考えている。

 ――将来を見据えて

高木 PLUS.1が接着材となり、BIM普及に向けたプラットフォームを作り、強みをもつ企業やソリューションがその中で連携し合う場を実現していきたい。そこにはキャパという開発機能があったり、別の会社の強みと結びつくことができたり、プラットフォームを通じて人材の提供や教育のサポートとも連携するような枠組みをイメージしている。

佐藤 プラットフォームの一員として得意の機能開発を担うことができれば、キャパにとってもさまざまな専門企業との協創が実現できる。個別案件でもプラットフォームメンバーとの協創関係が築けていれば、連携によってより高度な提案も実現できる。新しい要求に対しても最適な相手と結びつくことで、より幅広い受け入れもできるだろう。

高木 たとえばリクエストボードにこんな機能がほしいというような書き込みがあれば、共有しながら参加者が自発的に協創できるような枠組みも考えられる。プラットフォームは、BIMレベル3を実現するための枠組みにしていきたい。産業間連携を進める際、建設分野の中では生産性向上の基盤データであるBIMが、社会基盤のデータとしての役割を担う。範囲が広くなると解決すべき課題も増えてくる。

佐藤 BIMレベル3に到達した場合にはわれわれエンジニアの役割も変わり、AIの進展によって、仕事の流れも変わるだろう。しかし人間にしかできないアイデア出しの部分は変わらない。キャパ自身もシステム開発力をベースにしたアイデア提案会社としての役割に変わる可能性もあるだろう。

キャパ開発部



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