新社長・JR東日本コンサルタンツ 齊藤誠氏 | 建設通信新聞Digital

9月11日 木曜日

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新社長・JR東日本コンサルタンツ 齊藤誠氏

【技術・ノウハウを広げる】
 JR東日本コンサルタンツの新社長に齊藤誠氏が就任して約2カ月半になる。「品質と安全が信頼の基盤だ」と語り、最優先事項に位置付ける。同時に「外に向かって事業を広げ、社会に貢献したい」とも述べ、鉄道分野で培った知見やノウハウとデジタル分野との連携にも意欲を示す。今後の事業展開を齊藤社長に聞いた。--抱負を
 「品質と安全の順守を第一に、着実に調査、設計、保守管理の業務を進めていく。同時に、鉄道に関わるわれわれの技術やノウハウをデジタル分野と連携させ、新しいサービスや価値を提供できるよう、社内の主体的なチャレンジを後押ししていきたい」
--注力することは
 「長年培ってきた鉄道分野での調査、設計、保守管理に関わる技術にさらなる磨きをかけていく。これまでの業務受注先の大半はJR東日本グループだが、民間鉄道会社や鉄道建設・運輸施設整備支援機構といったグループ外部での業務にも貢献することで、真の意味で鉄道分野のトップコンサルタントを目指したい」
 「鉄道が中心だっただけに、総合力という面ではまだ弱い部分もある。道路やまちづくりなど幅広い領域に挑戦し、総合的な技術力を高めていくことも重要だ」
 「加えて、ビジネスの大きな可能性を秘めるDX(デジタルトランスフォーメーション)・ICT分野にも力を入れる。地方公共交通の維持や利便性向上など、社会課題の解決に直結する取り組みが社会から求められている。発注者側の技術者不足を支援する取り組みもJR東日本と連携しながら進めていきたい」
--デジタル・AI(人工知能)分野の展開について
 「今年3月、エッジAIで高い技術を持つ企業と資本業務提携を結んだ。この提携に基づきエッジコンピューティング技術とJR東日本という実証フィールドを組み合わせ、安全のための監視システムなどを開発していく」
 「わずかな時間での判断が求められる場面で、AIとエッジ技術の融合は非常に効果的だ。エッジAIの監視で瞬時に危険を察知できれば、線路内作業での安全確認やホーム監視などの信頼性が高まり、安全性向上や現場の人手不足解消、コスト削減につながり得る」
 「センサーを活用した橋梁等遠隔モニタリングシステムなど、既に開発した技術については民間や地方鉄道への展開を模索している。今後も技術やリソースを補い合い、ともに課題解決、新サービス創出に取り組む外部パートナー企業との連携を積極的に進め、現場の課題を技術で解決し、それを外部に展開することでビジネス化していく」
--組織・人材について
 「人材の確保は大きな課題と認識している。社員の高齢化も進んでおり、世代交代が急務だ。まずは若年層の待遇改善を進めていくとともに社員全体のモチベーション向上が図れるよう人事・賃金制度改革を進めていく」
 「発注者や土木・建築・機械・電気などの技術者、IT企業出身者など多様なバックグラウンドを持った豊富な人材が当社の強みだ。多様性を生かし、それぞれが持つ技術と意欲を引き出したい。そのためにも、より風通しの良い職場を意識し、挑戦や失敗を許容する文化を育てたい。社員が前を向き、技術力を高めていける環境づくりが大切だ」
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 (さいとう・まこと)1991年3月京大工学部土木工学科卒後、同年4月JR東日本入社。2020年6月総合企画本部投資計画部担当部長、22年6月執行役員建設工事部長などを経て、25年6月から現職。神奈川県出身。68年10月27日生まれ、56歳。
◆記者の目
 JR東日本グループ外への事業の拡大を大きなテーマに据える中、外に開いて多くの情報や企業に触れていこうと社員に呼び掛ける。外に目を向け、新しいことにチャレンジするためには、社員が失敗を恐れない組織風土が不可欠だ。「人こそ最大の財産」との信念を胸に、トップ自ら事業拡大の先頭を歩む。