【BIM/CIM未来図】BIM/CIM人材(上) 配属前に集中的な1ヵ月間の研修/データを「使う意識」育てる | 建設通信新聞Digital

9月24日 水曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図】BIM/CIM人材(上) 配属前に集中的な1ヵ月間の研修/データを「使う意識」育てる

国土交通省のBIM/CIM原則適用が3年目に入った。建設コンサルタント各社が業務効率化に向けたBIM/CIMデータ活用にかじを切る中で、人材育成を軸とした「ナレッジ」戦略の構築が重点課題の一つになっている。オートデスクが6月に開いた会合「BIM/CIMラウンドテーブル」では、復建調査設計(広島市)と大日コンサルタント(岐阜市)の事例を足掛かりに、参加した建設コンサルタントから課題解決に向けた活発な意見交換が繰り広げられた。

復建調査設計では、新入社員に対して入社後1カ月もの期間を費やし、DX(デジタルトランスフォーメーション)研修を開いている。DX推進センターBIM/CIM推進室の小川裕介氏は「BIM/CIMを含むデジタルデータ活用の有効性を認識し、配属後の業務で役立ててもらうことが狙い」と説明する。特にBIM/CIM関連の研修プログラムに力を注ぐ背景には国交省のBIM/CIM原則化が始まり、単にソフトの操作をマスターするだけでなく、業務にBIM/CIMデータを効果的に活用していこうという前向きな「使う意識」を植え付けたいとの思いがある。

復建調査設計の新入社員研修


5日間の新入社員向けBIM/CIM研修では、初日に土木設計の基礎やBIM/CIMの概論を学んだ後、3日間かけて社内の業務ツールに位置付けるオートデスクの3次元設計ツール『Civil 3D』やプロジェクトレビューツール『Navisworks』などの操作を習得する。研修最終日には5人一組で発注者の立場になり、その解決策をBIM/CIMデータを活用して探る場を設けている。他のチームの前で説明することでプレゼンテーション能力も磨いている。

同社は、社内各部署や派遣社員、グループ会社も含めた4日間のBIM/CIM研修も随時開いており、組織全体にBIM/CIMスキルの拡大を推し進めている。社内資格も創設し、BIM/CIMの技術水準を底上げするとともに、資格取得を保有するツールライセンスの活用条件にも設定している。資格はツール操作をマスターした「モデラー」、モデル作成を教えることができる「インストラクター」、責任者として発注者などに説明できる「プロジェクトマネージャー」の3段階に区分けし、現時点で延べ200人が資格を取得している。

BIM/CIM推進室の天野政之室長は「社内にはモデルの作成だけでなく、統合作業や提案づくりなどより実践的な活用を意識させている。業務課題に対していかにデータを利活用すべきか、使い方の部分を養うことが重要になる」と強調する。日頃の業務でもBIM/CIMデータ活用が広がりを見せている。道路設計では住民説明の場で3Dプリンターを使った模型活用の提案、交差点部の設計では排水計画立案に3次元を使い、排水勾配を面的に検証する事例も出てきた。2次元主体の業務でも、あえて3次元モデルを使うケースが多くなり、施工段階を見据えた収まり検討の意識も芽生えている。

新入社員のDX研修のうち、BIM/CIM研修はハンズオンを軸に約1週間もの時間を費やす。BIM/CIM推進室が講師を務め、主軸ツールであるCivil3Dの操作技術を徹底して教え込む。研修課題にBIM/CIMを選択した社員は引き続き2週間の研修課題にも取り組む。同社では若手が育ち、業務でBIM/CIMを積極的に活用し、いずれ教える立場になる循環の流れが構築されようとしている。

研修最終日の成果発表モデル



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