【記者座談会】閉幕近づく大阪・関西万博/2024年度のPFI実施状況 | 建設通信新聞Digital

9月29日 月曜日

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【記者座談会】閉幕近づく大阪・関西万博/2024年度のPFI実施状況

◇大屋根リング一部保存へ 思いや技術の継承を

大屋根リングの接合部分


A 4月に始まった大阪・関西万博も、10月13日に閉幕を迎える。

B 今回の目玉とも言える「大屋根リング」は、大阪府と大阪市が市営公園の施設として一部保存する方向で調査を開始するようだ。本格的な改修手法の検討は2026年度からになる。

C 大屋根リングは会場デザインプロデューサーを務めた建築家の藤本壮介氏が構想した。最高高さは約20m、全周は約2㎞にも及ぶ。日本の伝統的な木造建築に使用されてきた貫接合と、現代の木造技術を融合させた構法も見どころだ。大林組、清水建設、竹中工務店をそれぞれ代表とするJVが3工区に分かれて施工に当たり、別々の工法を採用して組み上げた。

D 実際に会場を訪れたが、リングの存在は圧倒的だった。意匠的な魅力はもちろん、多くの来場者が移動する動線としても機能していた。リング屋上に上る階段で、各工法の違いを目の当たりにできたことも、この業界に携わる人間として興味深かった。

B 「持続可能性」をテーマに掲げる今回は、万博協会がパビリオンの再利用も呼び掛けている。

D 大林組は、設計に携わったパナソニックグループのパビリオンで使用された設備機器や建材を同社技術研究所で建設中の実験棟に再利用すると発表したけど、リユースを前提に計画されたパビリオンも少なくない。万博の多彩な建築群は、その保存活用の在り方も実に多様だ。

C 建築物を保存する動きには賛成だ。ただ、単に「モノ」として展示・保存するのではなく、建築や出展に携わった人々の思いや技術、その意義などを後世に継承するようなソフト面の取り組みに目を向けることが、この万博が目指す持続可能性につながるのではないか。

◇実施方針公表は過去最多も不調多く

A ところで、内閣府が2024年度のPFI事業の実施状況を公表したけど、実施方針を公表したPFI事業数が前年度比60.3%増の93件で、過去最多を記録した。

E 確かに、紙面を見ていると、実施方針が公表されたという記事が多かった印象がある。内閣府の資料を見ると、制度が始まった1999年度以降、急激に実施方針の公表が増えたが、2010年度から15年度以降はいったん数が減った。おそらく、はやりの中でPFIに取り組んだ自治体が、財政負担を軽減できる“万能薬”ではないと気付いたのが大きいと思う。

F でも、16年度から18年度まではまた増え始めて、いったんはコロナ禍で大きく減少したが、24年度に再び増加に転じた。公共施設等運営権(コンセッション)方式が44.4%増で全体を押し上げたほか、団地の建て替え、電線共同溝整備、給食センター整備が非常に多い。

E トレンドに乗るのではなく、PPP/PFIのメリット・デメリットを把握し、民間活力を導入した効果がより高い事業に対する理解が広がったのではないか。あとは、やはり自治体の人手不足の中で、直営だけで公共施設を運営・管理することが現実的に困難になってきており、必要に迫られてPPP/PFIを導入している側面もあるのだろう。上下水道へのウオーターPPPも含め、今後もどんどん増加していくだろうね。

F ただ、実施方針は公表したけど、事業者選定で不調になったケースも少なくない。建設費の高騰で初期費用がかさみ、当初想定した収益を確保できないとみる事業者も多いだろう。丁寧な市場調査、建設費の高騰を織り込んだ事業設計が求められる。


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