Arentは、スタッグ(横浜市)の発行株式の一部を取得し、株式交換によって完全子会社化した。特色のある専門アプリケーションをもつ企業をグループ傘下に収め、建設分野の「アプリ連携型プラットフォーム」を構築しようと動き出したArentの鴨林広軌社長は「株式交換によって手を組むことが理想の形」と強調する。これはスタッグの石田泰三社長からの提案によって実現した枠組みでもあった。
M&A(企業の合併・買収)では全額現金で譲り受けるケースが多いが、スタッグには譲渡金の半分を株式で支払った。株式譲渡は株価変動のリスクもあるが、鴨林氏と同じく金融業界出身の石田氏は「株を保有することで、一緒に成長できる意識も芽生える」と思い描いていた。鴨林氏も「実は株式譲渡の枠組みを事前から検討していただけに、2人の思いが一致した」と説明する。
Arentのアプリ連携プラットフォームは、専門アプリケーション企業を増やしながら、共に成長していくことが理念にある。鴨林氏は「グループ会社が主役であり、われわれは常に下支え役として活動していく」ことを前提にしているため、株式をグループ会社が保有する枠組みは「各社との絆をより一層強くしてくれる手段の一つ」と考えている。
石田氏も「業績アップに貢献した社員にも株が付与されるような仕組みが実現するのであれば、Arentグループの一員として前向きな意識を持てる。スタッグの株式は消滅したが、Arentの株主の一人として働けることで、仕事のやりがいはさらに高まるだろう」と同調する。グループ会社を着実に増やしている中で、いずれは各社の経営者が株を保有する枠組みを整えようと考えていた鴨林氏は「社員も思いは同じという石田社長の考え方を聞き、より良い枠組みとして成立するのであれば、ぜひとも実現したい」と先を見据える。
7月の完全子会社化を境に、Arentとスタッグは足並みをそろえ、二人三脚による力強い一歩を踏み出そうとしている。今秋にリリースする図面作成支援ツール『申請くんfシリーズ』のAI(人工知能)機能版に合わせるように、営業活動も本格化する。AI機能の搭載という新たな話題は営業提案のきっかけになる。「開発力と営業力の相乗効果がArentグループの強み」と両氏は口をそろえる。
パッケージ販売が主軸のスタッグでは販売数を増やすことが業績拡大の生命線になるが、それによってサポートへの負担がより増してしまうジレンマもある。石田氏は「現在進めているマニュアル機能の強化によって、その負担を軽減できれば、販売数をさらに引き上げる体制が確立できる」と確信している。「いずれは現在の上下水道分野を足がかりに設備領域全般にも進出してきたい」と力を込める。
Arentにとってはスタッグをはじめ、グループ各社のアプリケーションが常に進化していくことで、システム開発の底力を世間に広くアピールでき、個別企業から受託するプロダクト事業の追い風にもなる。鴨林氏は「まさに各社との相乗効果がArentグループのプレゼンスを高める原動力になる。われわれは一つの大きな船に乗っているわけではない。群れを成す鳥たちのように、それぞれが自らの船をこぎながら、一緒の方向に進んでいる。先導するのはArentだけではない。場合によってはグループ会社が先頭に立つことも当然ある」と強調する。Arentとスタッグは、程よい距離間を維持しながら、大空に飛び立とうとしている。