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【i-Con2026】東京大学大学院のi-Constructionシステム学寄付講座/堀田昌英教授

最終更新 | 2026/03/11 15:26

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堀田昌英東大大学院工学系研究科教授


 東京大学大学院のi-Constructionシステム学寄付講座(主宰・堀田昌英東大大学院工学系研究科教授)は、真正性を担保したデータで情報共有する共通基盤『R-CDE』の開発を加速している。受発注者が共通プラットフォームでデータ連携することで、飛躍的な業務効率化を実現することが期待されている。最新技術がこれまでの建設業の仕事の仕組みを変えていく中、寄付講座が取り組む人材教育や技術開発の最新動向について堀田教授に聞いた。
【東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授 堀田昌英氏/R-CDEが業務効率化に大きな貢献/次世代の教育プログラムを普及】

–これからの人材教育の在り方について

 寄付講座では、i-Constructionを実践するプロフェッショナル人材の育成に向け、土木系と精密工学系の大学院生がチームを作り自動施工に取り組む演習を実施しています。今年度はR-CDEのデジタルツインを一部導入し、4m×2mの空間でロボットOSを搭載したミニチュア建機を動かしました。バックホーがダンプに土を積み込み、土捨て場に運ぶプログラムを作成し、自動施工を実施しました。

 現場は一品もので計画と実際に乖離が生じるなど不確実性が伴います。そうした感覚を体験できるため、貴重な機会になったと思います。学生たちは道路をまたぐベルトコンベヤーを設置するなど工夫して取り組み、「ロボットOSを使い建機を協調させて動かすのは面白かった」と話していました。

 演習を始めた当初は不具合もありましたが、今ではスムーズにできるようになり、新たな技術も取り入れることで演習自体も進化していると感じます。建設業はAIやロボティクスを自分たちのものにしていく必要があるため、こうした次世代型の教育プログラムを確立し、普及させることが重要になると思います。

–25年度のR-CDEの取り組みは

 今年度はCDEセミナーを開催したほか、R-CDEの開発を進める協調領域検討会の専門サイト(https://common-env.jp/)も立ち上げ、情報発信に力を入れてきました。

 R-CDEは「全ての機能を備えた唯一無二のデータ環境」を目指すのではなく、工事の関係者が少しずつ必要なデータを持ち寄って連携することを基本コンセプトにしています。例えば施工者に必要な設計データがあれば自分のデータと設計データをやりとりする小さな環境を作ります。そうした環境をみんなが持ち寄り、システム間連携することで、相対として大きな環境を作り出す「持ち寄り方式」を目指しています。参加者が増え取り組みが広がり、ユーザーも効果も感じています。

 今年度は、国土交通省中部地方整備局岐阜国道事務所の「令和5年度156号岐阜東BP清水山トンネル工事」と、中国地方整備局岡山国道事務所の「令和5年度玉島笠岡道路浜中地区中工区改良工事」をモデルプロジェクトにして出来形の確認・検査を報告しました。

 どういう生産プロセスで各業務にどれくらいの頻度と時間をかけていたのかを明らかにし、どこに改善の余地があるかを考え、実際に改善できるかを検証しました。それには業務体系や仕事のやり方を見える化することが重要です。情報収集・共有の手間、書類作成工数、臨場検査をどれだけ削減できるかを細かく考えました。

 例えば、確認検査項目には出来栄えなど数値で測れないものは実地で行う必要がありますが、出来形の数値を比較する確認検査では「データの真正性が担保されているのであれば現地での実測は不要とすることも考えられる」という発注者の意見をいただいています。技術検査では「実測の準備は長時間を要するが実際に測るのは一カ所だけ。R-CDE上で寸法確認できるならそれがいい」という受注者の声もありました。実際のモデルプロジェクトで検証した結果、これまでの業務時間と比較すると、出来形計測から段階確認にいたるプロセスで66%の業務時間を削減することを確認しました。

 受発注者がCDEを共有することで連携が深まり生産性が上がりましたが、それ以上に「施工が完了してからではなくR-CDE上で逐一状況を確認できるのがいい。それが施工管理の品質につながる」と評価してもらえたのは大きかったと思います。「全部施工が終わってから結果が分かるのが怖い」という発注者の意見や「現場状況を容易に高頻度で共有できるのは望ましく若手の育成につながる」という受発注者の評価をいただきました。

 特に重要に感じたのは「発注者としては最終的に要求水準を満たしていればよいので、頻繁に確認しようと最後に良いものが出てこようとどちらでもいい。そう一般の発注者は考えがちだが、もう考え方を変えなければいけない」という意見です。

 受発注者が本来しなければならないのは、現場が大丈夫なのかを逐一確認することです。それができないから、最後に1回だけ現地で確認する現在の方法をとらざるを得ませんでした。今はそれができるため、発注者は考え方を変えなければいけないと思ったのです。そういう意識になったことが時間短縮効果よりも大きいと思います。

R-CDEのイメージ


–寄付講座として新たに取り組みたいことは

 これからやりたいのは実務者教育です。土木技術者が自らシステムを開発するニーズが高まっており、ましてやR-CDEが普及すればデータを扱う環境が整うため、少し頑張れば自分の業務改善のためにアプリをつくる世界になります。これまでの土木教育で育った人はハードルが高いと感じるかもしれませんが、それを底上げして、BIMやコンピューテーショナルデザインなど一通りの技術を自分で開発できる講座を作りたいと思います。

 大手企業だけでなく、地域建設業の技術者が参加することも想定しています。DXに積極的に取り組む地域建設業が増え、経営者にやる気があれば会社のシステムを一気に変えることができ、最先端の技術やシステムを積極導入する中小企業が増えました。そうした企業と相互に教え合う場にすることも重要です。

 企業が内製化と外注のどちらを選ぶかは経営戦略として重要です。建設業がどの部分を内製化すればボトムアップするのかを探る必要もあると思います。寄付講座の共同研究員にはインフラ関連企業のシステム内製化について研究している人もいます。企業ごとに条件は異なるため正解はないのかもしれませんが、各社の工夫が合理的であることは共通しており、一つひとつが参考になります。

デジタルワークフロー


 一方で、さまざまなICTツールがあふれる中で自社に合わないツールを取り入れてしまい、かえって非効率に陥るケースもあるようです。そうした部分も含めて講座で学び合うことが重要です。

–CDEはどのように普及しますか

 CDEも数多く登場し、「Platform of Platforms」という考え方が注目されています。複数のプラットフォームやアプリケーションを包括的に統合し、相互運用や連携を可能にする共通基盤を意味しています。大きなプラットフォーマーに話を聞くと、もともと対立することを想定してCDEを始めたのではなく、みんなでデータを共有して便利になるために始めたので、「協調領域」として協力関係が自然に成立していくことが期待されます。

 国交省は、事業ごとに一気通貫でデータを持てる「プロジェクトCDE」を開発しました。NEXCO東日本の「スマートメンテナンスハイウェイ」もありますし、大手ゼネコンのように独自のプラットフォームやアプリの体系をつくるケースもあります。 既に多くのCDEがある中、R-CDEはより大きなプラットフォームをつくるのではなく、 互いに持ち寄る相互接続性を重視します。

 BIMにIFCがあるように、 プラットフォームにも共通したプロトコルや基準があれば、 もっと皆さんのお役に立てるはずです。 プラットフォーム同士の競争がゆき過ぎるとユーザーはメリットを享受できなくなるため、 協調領域をどう整理していくのかが重要になるでしょう。

–建設業の今後の方向性について

 建設業は新技術を導入することで仕事の仕組みが大きく変わりつつあります。河川管理では、これまで河床の地形データを取るのに数十mから数百mに一つの断面しか取れなかったのが、現在は衛星やレーザースキャナーを利用して流域全体を3次元データで管理できるようになりました。これにより河川管理の在り方が大きく変わってきています。例えば目的別に3次元データを利用できるアプリを開発し、データを自動で取り出せるようにすれば、意思決定しやすくなるでしょう。

 自治体が取り組みを進めている群マネにもCDEを導入するメリットがあります。例えば広域連携で道路舗装の平滑性を計測し、GISで共有する取り組みが増えてきましたが、自治体間のデータ共有にCDEを活用できます。それには相互接続が重要で、セキュリティーを考慮した上で自治体がそれぞれ保有している情報をどこまで連携するか検討することが必要です。

 新しい技術の活用が広がる中で、精密工学など関連分野の人材が建設の世界に入ることで、現場はよりおもしろくなると思います。もちろん手仕事でなければできない作業があるのが土木の魅力で尊いところでもありますが、業界全体で新技術を活用することで、これまでと様相が変わってきました。インフラに対する社会需要に応えるためにも、今後も仕事の仕組みをアップデートしていくことが大切です。

 

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