【大気社】需要増加する"工場育ち"野菜 結球レタスで新たな市場開拓を目指す | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【大気社】需要増加する“工場育ち”野菜 結球レタスで新たな市場開拓を目指す

植物栽培の最適環境を実現

 長年培ってきた独自の環境制御技術を生かし、大気社が開発した完全人工光型・水耕栽培植物工場システム「ベジファクトリー」が、植物工場市場で注目を集めている。同社は2010年から研究・開発を始め、この間には世界で初めて結球レタスの安定量産化にも成功。国内外で着実に受注実績を積み重ねている。顧客ニーズへの対応を強化するため、ことし2月には東京都板橋区に植物工場の実証開発センターも開設した。
 近年、野菜の安全性や安定供給へのニーズが高まっている。同社がターゲットにしているのは、空調や環境制御技術を生かせる完全人工光型の植物工場。太陽光型の植物工場よりも、収穫量や生産の安定性、野菜の均一性・安全性、生菌数、害虫混入の可能性など、さまざま点で優れている。大量の水を使う洗浄工程の大幅カットなどで、運用コストも削減できる。
 採算ラインの目安となる日産3000株以上の大型物件を対象に、販売先の確保を含めた企画立案から設計・施工、量産支援、メンテナンスまでを一貫して手掛ける。市場規模が大きく、年間を通して需要のあるレタス類を主な栽培品目にしている。

世界で初めて完全人工光植物工場での安定量産化に成功した結球レタス

 完全人工光型植物工場産レタス類の国内市場規模(生産額合計)は、5年間で2倍強に拡大すると予想され、それ以降も業務用・加工用野菜の需要増加を背景に、同等ペースでの成長が見込まれている。最近では味の良さや栄養価の高さ、圧倒的に長持ちする鮮度といった付加価値が評価され、高級ホテルや豪華客船、航空会社などでも採用されているという。
 大気社が現在注力しているのが、コンビニエンスストアや飲食チェーンなど大口の需要が見込め、特に安定供給に対するニーズが高い業務用分野だ。市場開拓に向け、野菜の大型化による1個当たり生産単価の引き下げや栽培日数の短縮、多様なニーズに対応する多品種栽培などの技術開発に取り組んでいる。

倉庫を改修した実証開発センター

 事業化を見据えた顧客との共同開発なども念頭に、2月には板橋区にあった倉庫を改修し、実証開発センターを開設した。週3回の見学会はほぼ予約で埋まっており、流通や食品関係以外にもさまざまな業種の企業が訪れている。
 ベジファクトリーには、データセンターで使われているものと同様の空調方式を採用。空間上部からゆっくりと吹き出される冷気を循環させ、工場内の温度ムラをなくす。センターの天井高は約5mあるが、最上段と最下段の温度差は2度ほどで、その間に位置する栽培エリアはほぼ均一に保たれている。
 照明システムは、従来の2倍以上の光量を持つ高照度タイプで、光を漏らさない反射板構造となっている。1日14時間程度の照射で高効率栽培ができるため、夜間電力時間帯を活用した低コスト栽培が可能だ。
 センターでは、午後8時から午前10時を昼時間帯として室内温度を22-23度、CO2濃度を外気の約4倍に相当する1500ppmに維持。夜時間帯は温度を17-18度に設定している。

空調吹き出し口(上面)

 最大12段の棚ラック構造で空間効率を向上。高所作業車がいらず、人が直に歩けて、作業性と安全性に優れる中間ステージ方式も特長の1つだ。また、リサイクル循環水耕による連続栽培方式で、365日安定した収穫を実現。抗菌フィルターやモニタリング技術などにより、除菌・防虫対策にも万全を期している。
 同社唯一の強みである結球レタスは現在、露地栽培がほとんどで、完全人工光植物工場産の市場がないのが実情。結球レタスは、工場産が出回っているフリルレタスなどには足りない食感が売りで、サンドイッチやハンバーガーなどの具材に適している。生産性を一層高めた量産技術の確立などにより、新たな市場の開拓を目指す。

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