【現場最前線】国内最大級の図書館! 高難度の意匠に挑む九大(伊都)国際化拠点図書館(II期)新営工事 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【現場最前線】国内最大級の図書館! 高難度の意匠に挑む九大(伊都)国際化拠点図書館(II期)新営工事

法面に埋め込まれた円錐状の外観

 2011年に創立100周年を迎えた九州大学は、福岡市西区元岡・桑原地区、福岡県糸島市にまたがる約272haの広大な敷地に05年から伊都新キャンパスの整備を進めている。その一角、イーストゾーンに次の創立200年を見据えた直径200mの弧を描く巨大な建物が姿を現した。新中央図書館となる「九州大学(伊都)国際化拠点図書館(II期)新営工事」だ。建築施工を担当する戸田建設九州支店の久保重隆作業所長は、「意匠の施工難度が高く、構造体の精度確保に注力するとともに、エンドユーザーの声を可能な限り取り入れるよう心掛けている」と話す。工事は順調に進み、作業所は9月末の竣工に向けて最盛期を迎えている。

4層吹き抜けの内部。今後、 壁面書架が設置される

 同図書館は、収容冊数約350万冊(うち開架200万冊)、座席数1377席と国内最大級を誇る。全体の約3分の1を占めたI期工事は16年3月に引き渡しを終え、同年10月にプレオープンした。全面開館時は約260万冊でスタートする予定だ。内部の吹き抜け空間に配置された閲覧スペースは4層吹き抜けの大空間となっており、東面、南面、北面に壁面書架、西面の外壁窓際と放射線状に配置された4本のブリッジに閲覧席を配置して、本に囲まれた空間で勉学に励んでもらう計画になっている。また、約150万冊収容の自動書庫や貴重な資料などを収納する貴重書庫を備える。
 吹き抜け部最上階の鉄骨トラスは最大35mスパンで、九州大学の松葉の校章を模し、放射線状に配置されている。外観は直径200mの円錐を法面の中に埋め込み、すり鉢状に張り出すデザインになっており、見応えがある。最上階には講義棟2棟と食堂棟を配置する。このため、建築基準法上の階数は地下4階地上2階建てとなる。

外側に傾斜した外壁

 II期工事は15年11月に着工した。建物東側にある地下水の影響や土圧軽減を目的としたピット空間は、敷地特徴の法面形状を生かした計画になっている。一方、西側の外壁は、日射の影響を抑える省エネ対策の一環で上層階に向かって外側に8度傾斜させ、地下4階部分から最上階まで約280cm張り出している。
 複雑な地形や4層吹き抜けの内部空間など施工の難易度は高く、作業所では躯体工事の安全性と品質・精度確保が課題になった。このため、「工場製作を積極的に採用して工業化を図ったり、本社技術開発センターで構造解析を行い、安全性や品質確保、精度の向上に努めた」。また、鉄骨建方時には、鉄筋を先組みして施工効率を向上させた。外側に傾斜している外装工事は、在来型枠工法から外壁ハーフPC板工法を提案し、足場を含めた安全性と施工効率の向上を実現した。それでも、「外壁廻りの仕事は、基準階がなく各階で基準墨が変わり、墨出が大変だった」と振り返る。

4層吹き抜け空間

 ICT(情報通信技術)化では、紙の図面とiPadを活用したPDFデータを併用している。作業所全体とエレベーターの竪穴を写すWEBカメラも設置し、作業状況や搬出入車両の混雑の度合いが事務所で把握できるほか、安全性の確保にも役立てている。CADデータは、建築の協力会社はもとより、別途設備工事会社と共有している。
 毎週1回行われる定例打ち合わせには、九大施設部のほか、図書館担当者も参加する。「エンドユーザーの要望を可能な限り取り入れる」ためだ。机の向き、扉の開き方、電気錠や照明、空調機器の配置まで細かく打ち合わせをして対応するなど、「利用時の不便さを少なくしたい」考えだ。職長会活動も活発で、一掴み運動など日ごろのごみ拾いや整理整頓をすることで九州大学構内での作業にふさわしい作業所運営を心掛けている。
 現在は躯体工事が完了し、内装工事がメインになっており、9月末の竣工後、書架や閲覧席の設置、資料の移転などを経て、18年10月にアジアのトップブランドとして次の100年を担う図書館が誕生する。

【工事概要】
▽工事名称=九州大学(伊都)国際化拠点図書館(II期)新営工事
▽建設地=福岡市西区元岡744(九州大学構内)
▽構造=SRC・S造地下4階地上2階建て
▽延べ床面積=1万7086㎡(II期工事)、図書館全体で2万4829㎡
▽工期=2015年11月-17年9月
▽設計=九州大学施設部、石本建築事務所
▽施工=戸田建設(建築)、ダイダン(電気設備)、大気社(機械設備)

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