京都府八幡市/新本庁舎でBIM・FM連携 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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京都府八幡市/新本庁舎でBIM・FM連携

 京都府八幡市は2023年の完成を目指す新本庁舎の維持管理に向け、BIMモデルを活用したFMシステムの構築に着手した。運用が始まれば公共施設におけるBIM・FM連携の先駆的な事例となる。現在は実施設計と施工の一括発注段階にあり、庁舎完成はまだ3年以上先だが、市は既にBIM・FMシステムの核となる施設管理ソフトも選定し、庁舎運用初年度からの最適管理に向け、念入りに計画作成を始めた。
 「FMまで使ってこそBIMのメリットを最大限に生かせる」と、同市総務部総務課の山口潤也主幹は力を込める。市では基本計画に着手した17年当時からBIM・FMの有効性を考えており、基本設計の完了に合わせ、ことし4月に新本庁舎の管理マネジメントシステム構築業務を外部委託した。

2023年の完成を目指す新本庁舎の外観パース

 プロポーザルで選ばれた日建設計にとっても、国内初のBIM・FM連携を強く意識する。服部裕一ソリューション戦略室ダイレクターは「庁舎のFM業務は全国で数多く手掛けるが、今回のように施設整備の段階からFMを考える試みは初めて。公共施設へのBIM導入が進めば、こうした流れが今後拡大する可能性は大いにある」と見通す。
 「やさしいBIM」をコンセプトに汎用性が高いFMシステムの構築を提案した日建設計の安井謙介3Dセンター室長代理は「市職員が使いやすく、建物管理のノウハウや経験も蓄積できる枠組みを重視した」と説明する。将来の多棟一括管理も見据え、FMシステムには世界各国に2万4000社もの登録企業数を誇るFM管理ソフト『ARCHIBUS』を選定。「管理情報を市が指定する場所(データベースクラウド)に保管できることも利点」と続ける。
 市では「提案のあったARCHIBUSは国際基準のISOにも準拠し、安心して運用できる」(山口氏)と受け止めている。BIM・FMシステムは新庁舎に限定しているが、市には163の保有施設があり、この試みが軌道に乗れば、多棟一括管理も効率的に行う道筋も整う。
 一括発注する実施設計と施工については12月にも受注者が決まる見通し。日建設計はFMであれば、BIMの詳細度(LOD)を基本設計レベルで十分と判断しており、設計・施工用のBIMとFM用のBIMを「パラレル」で運用しながら、設計変更があった場合などには受注者が情報をFM側に共有し、日建設計がモデルを更新する。
 建設段階からBIM・FMシステムの構築に乗り出す狙いについて、山口氏は「完成初年度から円滑な施設管理を行うため」と強調する。国レベルでは官民一体の建築BIM推進会議が発足し、FMまで見据えたBIM活用の検討も始まっただけに「1つのモデルを示したい」とも語る。

掲載は『建設通信新聞』2019年10月16日