【国土交通省】公共事業の施工時期・履行期限平準化へ 直轄が率先垂範で措置定着を目指す | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【国土交通省】公共事業の施工時期・履行期限平準化へ 直轄が率先垂範で措置定着を目指す

 公共事業における施工時期・履行期限の平準化の取り組みを先導する国土交通省は、2020年度当初予算に合計3200億円規模のゼロ国債と2カ年国債を設定した。19年度に引き続き、業務についても当初予算からゼロ国債を導入。新・担い手3法でも明確に平準化を進めることが規定され、市区町村に対して強く取り組みの推進を要請する中で、直轄が率先垂範して平準化措置を定着させる。

適切な履行期間・工期設定と国債活用を組み合わせ平準化を実現


 『2カ年国債+当初予算におけるゼロ国債』という平準化措置の規模は、それまで補正予算で活用されてきた「ゼロ国債」を初めて当初予算に組み込んだ17年度の約3000億円から、18年度の約3100億円、19年度の約3200億円と増加。20年度予算案でも2カ年国債(国庫債務負担行為)に1966億円、ゼロ国債に1242億円を設定し、19年度と同規模を維持した。

 年度当初が閑散期となってしまう傾向が強い公共事業で、発注の平準化に取り組むことによって年間を通じた発注量(仕事量)のバランスをとる。結果として、受注者である建設企業にとっては人材・資機材の実働日数の向上による経営の安定、労働者にとっては繁忙期が緩和されることで休日の確保など処遇の改善につながる。発注者にとっても職員の働き方改革や工事量の偏りが少なくなることによる入札不調・不落対策といった効果が期待できる。

■業務の履行期限、平準化目標設定
 測量、調査、建設コンサルタントなどの直轄業務においても、履行期限のさらなる平準化に取り組む。3月に集中している“納期の山”を他の期間に分散させるため、20年度以降は、▽第1四半期=10%以上▽第2四半期=10%以上▽第3四半期=20%以上▽第4四半期=60%以下–を目安に各地方整備局で目標を設定。中長期的には履行期限の件数ベースで上期50%、下期50%を目指す。

 測量、調査、建設コンサルタント業務の建設関連業の大企業については、19年4月から改正労働基準法に基づく罰則付きの残業時間上限規制の適用が開始され、大部分が該当する中小企業にもことし4月から適用開始となった。

 加えて、昨年の公共工事品質確保促進法(品確法)の改正で、測量、調査、建設コンサルタント業務を含む「調査等」が同法の対象となることが明記されるとともに、公共事業における適正な履行期限の設定など働き方改革への対応が発注者の責務として規定されたことから、早急な対応が求められている。
 業務サイクルの見直しに当たっては、年内納期とする早期発注や翌債の活用などにより、適正な履行期間を確保した上で、四半期ごとの発注計画を作成する。その際、真に必要な業務を除いて、履行期限が3月とならないよう配慮する。

■政府も平準化重視、総務省連携で要請
 政府も施工時期の平準化による、働き方改革の推進や生産性向上、安定的な施工確保など多様な効果に注目し、「中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキンググループ」で主要テーマの1つとして取り上げている。昨年12月に開催された同会議では、国交省と総務省が連携し、自治体に対して施工時期の平準化の取り組みを促進するための働きかけを行うことを報告した。

 国交省による土木担当部局・契約担当部局といった発注部局への要請に加え、総務省から財政担当部局に対しても取り組みを求める。平準化を進める上での課題だった財務部局との調整について、総務省から直接働きかけてもらうことで、取り組みが進めやすい環境を整える。

■発注関係事務改善へ、新たに全国統一指標
 自治体などの発注関係事務の改善を目的に設定している「全国統一指標」については、品確法改正に伴い、新たな全国統一指標を設定する。工事だけでなく業務を含めた指標を定め、取り組みを強化する。さらに、地域ブロックごとに「地域独自指標」も設定し、これまでの地域発注者協議会を通じて進めてきた取り組みを発展させる。

 全国統一指標は、市町村などの公共発注者が、発注関係事務の共通ルールである品確法の運用指針に沿った適切な発注関係事務に取り組むための環境整備の一環として16年度に作成した。運用指針に示す主なポイントのうち、「適正な予定価格の設定」「適切な設計変更」「施工時期等の平準化」の3点を重点項目に設定し、ブロックごとに目標値を決めて、取り組み状況のフォローアップとその結果の公表を実施してきた。

 これまでの取り組み状況を全国的にみると、「施工時期の平準化」について、自治体を中心にいまだ課題が散見される。新統一指標の設定により、それぞれの発注者が自らの状況を客観的に把握できるようにすることで、発注関係事務のさらなる改善につなげていく。

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