【JRE-BIM最前線/一般化とその先へ(下)】点群技術の高度利用/受発注者が知見合わせ最先端へ | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

B・C・I 未来図

【JRE-BIM最前線/一般化とその先へ(下)】点群技術の高度利用/受発注者が知見合わせ最先端へ

 計画段階から一気通貫でBIMを使用するモデル事業としてJR東日本東京工事事務所が進めている「横須賀線武蔵小杉駅2面2線化事業」が、施工段階に入った。360度カメラなどで撮影した画像を基に点群を生成し、3Dモデルとの合成や時系列管理が可能な『Reconstruct』を試行導入し、検査や立会いの遠隔化、維持管理の記録ツールとして効果を検証しながら、施工者の大林組とBIMの高度利用を進めている。同駅の2面2線化は、現在の島式ホームに下り線ホームを新設し、上下ホームを分離する。JR東日本と大林組の双方がBIMやICTを試行するモデル現場に位置付ける。

点群の高度利用が進む武蔵小杉駅2面2線化事業。3次元アンカーの位置を干渉しない位置に調整


■点群で業務を遠隔化
 『Reconstruct』は、米国イリノイ州立大学の研究から派生したReconstruct社が開発した点群生成アプリケーションで、撮影した画像から自動で点群化(SfM技術)し、クラウドで管理する。

 試行中の出来形検査の遠隔化では、現場で組み立てた鉄筋かごを360度カメラで撮影する。点群データから鉄筋の間隔や本数を確認し、従来の現地確認と精度などを比較する。JR東日本東京工事事務所神奈川工事区の中山泰成助役は「一度画像を撮影し、点群データを生成すれば後で細部を検証できる。工場製作のプレキャスト部材の遠隔検査にも有効だ」と期待する。

 検査や出来形計測記録、報告書を点群とひも付けし、施工履歴を蓄積するプラットフォームとしても検討する。



■現況データを使い効率化
 同工事は、既設高架橋に新設高架橋と接続用の鉄筋をあと挿入し、新設高架橋の構造用鉄筋として利用する。そのため、既設高架橋の配筋状況を精度良く把握しておく必要がある。そこで大林組は、あと挿入鉄筋の設置位置検討の効率化に点群を活用する。

 従来はコンクリートの一部を撤去し、露出した配筋を巻き尺などで計測して平面図を作成し、既設鉄筋を切断しないようにあと挿入鉄筋の位置を決める。こうした手作業には、高所で行う危険性や計測精度が悪いと手戻りが生じるため、その改善を検証する。

 測定は、ハンディー3Dスキャナーを使用する。コンクリートをはつり後の配筋をスキャナーで測定し、その点群データとあと挿入鉄筋の3Dモデルを重ね、干渉しない設置位置を決める。断面図も切り出して現場で活用する。将来はAR(拡張現実)を活用し、あと挿入鉄筋の3次元モデルをタブレット端末に表示し、実寸で現場に表示して位置出しすることも構想する。

 「空飛ぶクルマ」を開発する有志団体からスピンオフしたSkyDriveが開発し、30kg以上持ち上げて飛行できる重量運搬用カーゴドローンも試行する。山中孝文大林組生産技術本部先端技術企画部主任は「鉄道現場における狭あい個所の揚重作業、資機材の人力運搬作業での活用を目指したい」と説明する。

 作業員に取り付けたウェアラブルカメラと事務所のパソコンをつないだ現場巡視にも取り組む。高橋寛大林組土木本部i-Conセンター課長は「ベテランの技術を継承する記録ツールにもなる。夜間の作業を昼間に見直すなど、使える用途は広い」と語る。

 矢吹信喜大阪大大学院教授は「発注者の取り組みに受注者の知見を組み合わせることで最先端を目指せる。鉄道工事は上流段階に施工の専門家の知見を反映すれば大きなコストダウンにつながる。互いにアイデアを出し合う仕組みをBIMで構築できる」と意義を語る。BIM一般化の先にある景色が見えてきた。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら