【異業種・異分野100人の力が結集】横浜の大地に立ったガンダム 動かした人々の想いとは | 建設通信新聞Digital

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【異業種・異分野100人の力が結集】横浜の大地に立ったガンダム 動かした人々の想いとは

 国民的アニメ『機動戦士ガンダム』の放送開始から40年、巨大な敵に立ち向かうガンダム――。12月19日、横浜・山下ふ頭、アニメの世界と同じ実物大18mの姿で動き出す。みんなの“夢”をかなえたのは、研究者、エンジニア、設計・建設企業など各界のプロフェッショナル総勢100人以上の「ガンダムを動かしたい」という思いだった。その過程では、他分野が集まったために苦労した点もあったという。

空へ両腕を掲げるガンダム


 実物大ガンダムを動かす「ガンダムGLOBAL CHALLENGE」は2014年に始動した。その実現に協力した企業は、乃村工藝社、アスラテック、川田工業、住友重機械搬送システム、ココロ、ナブテスコ、安川電機、三笠製作所、前田建設工業の9社で、いずれも技術力に定評があるプロフェッショナルたちだ。企画設計からシステム、外装まですべてを国内で手掛けた。

 この制作の現場を率いたのがガンダムGLOBAL CHALLENGEの石井啓範テクニカルディレクター(ハードウェア担当)、川原正毅クリエイティブディレクター(造形・演出担当)、吉崎航システムディレクター(ソフトウェア担当)の3人だ。

ディレクター(左から川原氏、石井氏、吉崎氏)


 吉崎氏は、「ここまでたくさんの分野が集まれたのは“ガンダム”という存在があってこそのもの。ガンダムが人を集めてくれた」と言い切る。そこからガンダムを動かすという1つの目標に向かって、2週間に1回各企業の代表者30人ほどが集まり議論を交わした。役職や立場などに関係なく思いをぶつけ合った。この打ち合わせの場には参加できなかった各社の技術者なども合わせると、総勢100人以上が夢のために汗を流したことになる。

 現場を率いた1人である石井氏は「さまざまな分野の技術者が集まったがゆえに、コミュニケーションの取り方が難しかった」と苦労した点も明かす。議論の場では、各業界の専門用語が飛び交う。普段は交わることのない業界だからこそ、例えば、機械をつくる側、建築側ではお互いの専門用語がわからないという事態に直面した。「議論が白熱する中、他業種の技術者から飛び出す専門用語の意味はこっそりその都度調べた」(石井氏)と笑う。それぞれのバックグラウンドの違いも障壁となったが、対話を繰り返すことで乗り越えた。

前田建設工業のICI総合センターで公開した外装前のガンダム


 動くガンダムの実現は、異業種・異分野が結集して新たな価値を生み出すオープンイノベーションの成功例としても、大きな成果を残したと言えるだろう。

 ここからは、動く実物大18mのガンダムが立つ「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」を紹介する。

 施設は、ガンダムを間近で見学できる「GUNDAM-DOCK」と動くガンダムの仕組みがわかる展示施設やカフェ、物販施設などからなる複合施設「GUNDAM-LAB」の2エリアで構成する。有料観覧デッキ「GUNDAM-DOCK TOWER」では、15~18mの高さからガンダムの頭部やコックピット部分を間近に見学することも可能だ。

ガンダムドックタワーから見下ろす


 重さ25tの実物大ガンダムは、午前10時30分から午後8時30分まで、30分ごとに異なる演出で動き出す。11月30日のメディア向け内覧会では、司令官、オペレーター、パイロットの音声による掛け合いと迫力ある音楽のもと、スモークをあげながらガンダムが前進。両腕や両脚、頭部、手指の稼働のほか、飛び立つような動きも見せた。ハンドを除く24カ所が動くという。音声による演出は、アニメ版とは異なる声優を起用し、今回のイベントのために新たに収録した。

 演出を担当した川原氏は「昼間のガンダムももちろん見てほしいが、夜の照明演出にもこだわった。とてもきれいなので、ぜひ夜のガンダムも体感してもらえたら」と勧める。

 ガンダムの見学と合わせ、GUNDAM-LAB内のアカデミーも見どころだ。動くガンダムの仕組みなどがパネルや映像で学べるコーナーで、プロジェクトに関わった技術者の思いや裏話などもわかる。5G(第5世代移動通信システム)通信を活用してガンダムのコックピットに乗り込んだような体験ができるコンテンツも設置した。

GUNDAM FACTORY YOKOHAMA入り口


 LAB内には、会場限定オリジナルガンプラなどが購入できるショップや、横浜ならではのご当地グルメとガンダムがコラボした限定メニューを味わえるカフェも備える。カンファレンスルームでは、トークショーやワークショップも開催する予定だ。

 開催期間は12月19日から22年3月31日まで。入場にはチケット購入が必要。12月分の有料観覧デッキチケットは完売済みとなった。所在地は横浜市中区山下町279-25。

【参画企業の担当】
 ▽乃村工藝社=本体デザイン・演出、フレーム・外装パーツ▽アスラテック=モーションプログラム、制御システム▽川田工業=GUNDAM-DOCK・LABの建築施工▽住友重機械搬送システム=ガンダムを後ろから支えるGUNDAM-CARRIER▽ココロ=本体ハンド▽ナブテスコ=本体減速機▽安川電機=本体モーター、制御装置▽三笠製作所=本体電気配線▽前田建設工業=試験施設・試験技術提供。

写真=(c)創通・サンライズ

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