【BIM未来図・大旗連合建築設計①】着実に基本・実施の一貫BIM 先行企業が成長を後押し | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM未来図・大旗連合建築設計①】着実に基本・実施の一貫BIM 先行企業が成長を後押し

 建築設計事務所のBIM導入が伸展する中で、大手・準大手クラスに続いて中堅クラスにも動きが広がってきた。特に意匠、構造、設備の機能を持つ地域主体の総合事務所では組織力強化の手段としてBIMを効果的に使い始めている。広島に本社を置き、中国エリアを主体に活動する大旗連合建築設計も、BIMを足がかりに成長路線を歩む。地域主体の事務所に象徴的な動きの1つだ。既に設計案件のほぼ100%でBIMを活用する同社の大旗祥社長は「設計者の自主性に任せながら、一歩ずつ着実にBIMと向き合っている」と手応えを口にする。

大旗社長


 同社がBIMに取り組んだのは2009年。国内でBIMが注目されたBIM元年のころだ。同業他社の動向を踏まえながら「いまからやらなければ取り残される」と、主要BIMソフトの中から直感的なモデリングが実現できるグラフィソフトの『ARCHICAD』の導入を決めた。大旗社長は「当社はチャレンジする社風。CADが登場した時もいち早く導入に踏み切ったように、BIMに対しても前向きに受け入れてきた」と振り返る。

 とはいえ、長年慣れ親しんできた2次元汎用CADからの転身には時間がかかった。BIMはプロポーザルなど提案づくりでの活用が主体となり、使い手も若手に限定されていた。S造5階建て延べ1538㎡の広島和光本社ビル建設プロジェクト(施工=竹中工務店)では設計を2次元で進めながら同時並行でBIMモデルを再現したように、徐々にBIM導入へのチャレンジを進めてきたが、基本設計から実施設計までを一貫してBIMで進めたケースはなかった。

広島和光本社ビル


 ターニングポイントとなったのは3年前に手掛けたS造7階建て延べ2000㎡の中國新聞備後本社新築プロジェクトだった。施工を担当した鹿島の後押しが原動力になった。当初は2次元で基本設計を進めたが、鹿島から施工段階の活用を見据えBIMモデル化を相談され、そのための具体的なアドバイスも受けた。これが同社にとって「実施設計までBIMで仕上げた初の試み」となった。

中國新聞備後本社


 伊藤智宏取締役は「実はわれわれから依頼し、鹿島はBIM勉強会も開いてくれた。それがいまや当社の大きな財産になっている」と考えている。安井建築設計事務所や吉村建築事務所(京都市)などからもBIM導入のアドバイスを受けており、「われわれは先行する企業の力を借りながら成長している」と強調する。

 同社のBIM導入率は部分的な導入も含めれば、ほぼ100%に達する。今秋には自社で初めて基本設計から実施設計までを一貫してBIMで手掛けたS造6階建て延べ6850㎡の比治山大学新3号館改築プロジェクト(施工=錢高組JV)が着工した。現在、基本・実施設計の一貫したBIMは設計中で2件、工事中で4件の計6件に達し、稼働中プロジェクトの3分の1ほどに達するまでに拡大している。大旗社長は「まだ自信を持って取り組んでいるとはいえないが、地道に泥臭くBIM導入を推し進めている」と力を込める。

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