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【45°の視線】建築史家・建築批評家 五十嵐太郎氏 寄稿「森高千里と『この街』の建築」

最終更新 | 2021/12/24 13:29

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 オリンピックの開催が起爆剤の1つになって、東京ではさまざまな再開発が行われ、一見にぎやかだが、本当に見るべき画期的な建築は増えただろうか。ほかのグローバル都市であるニューヨーク、ロンドン、北京、シンガポール、ソウルなどに比べると、正直心もとないように思われる。いや、そもそもしばらく前から東京で注目すべき建築が登場していないのではという疑問を抱く。筆者は幾度かグッドデザイン賞で建築部門の審査を担当したが、全体のベスト100に推薦すべき作品を絞り込んでいくと、実はほとんど地方の作品になっていた。

 こうした感覚をはっきりと可視化したのが、『日経アーキテクチュア』2019年4月11日号の特集「平成の10大建築」である。これはアンケートの集計に基づくものだが、ワンツーはぶっちぎりで、せんだいメディアテークと金沢21世紀美術館だった。そして筆者が驚いたというか、やはりそうなのかと思ったのが、ベスト10に東京の建築が1つしかランクインしていなかったことである。

 しかも、その唯一の作品が東京駅の復原工事だ。もはや建築の新しさを切り開くものではない。地価が高く、資本回収の圧力が強い東京では、実験的なプロジェクトが難しいのだろう。逆に、危機感を持った地方では意欲的な建築が生まれている。コロナ禍で海外に行けなくなった代わりに、なかなか訪れる機会のなかった地方の建築を見学していると、確かに充実した作品が少なくない。

 ところで、ことし、森高千里のコンサートを初めて体験する機会があった。筆者よりも上の世代で、構法学の松村秀一東京大学特任教授や複数の建築家など熱狂的な信奉者はいるが、そこまでのファンではない。好奇心から一度見ようと思い、ぴあのチケットで抽選が当たったのである。名曲『雨』において、サポート・ギタリストの鈴木マリアによるソロも素晴らしかったが、やはり歌詞が興味深い。

 よく知られているように、彼女はアイドル的な出自でありながら、(なんちゃって)ロック風の楽曲を歌う。デビュー当時をのぞくと、基本的に歌詞をすべて自分で書いている。その世界観がユニークだ。以前、筋肉少女帯の大槻ケンヂは、ロックの歌詞は「僕は君が好きだ!」と「こんな世界は嫌だ!」という2種類しかないと指摘していたが、森高はそのどちらでもない。


五十嵐氏が見た森高千里コンサートの入り口風景


 ロックやアイドルを揶揄(やゆ)するような曲もあるが、ここでは風景を歌う歌詞に注目したい。特に有名なのは、『渡良瀬橋』(1993年)だろう。もともと地名の響きが気に入って題材にしたらしいが、ここは足利市の名所となり、歌碑も建立された。地方ということで言えば、タイトルどおり、ただ47都道府県の県庁所在地と名物を歌い上げていく、『ロックンロール県庁所在地』(92年)という曲もある。

 平成の始まりに発表された『この街』(90年)は、森高が出身地の熊本弁で語るパートも含む、ふるさと讃歌だ。2019年に始まり、来年まで続く「この街ツアー」の名前のもとである。筆者が訪れた会場は三軒茶屋だったが、コンサートのトークでは、事前に地元のおいしい食べ物をチェックし、その話題を出し、『この街』の歌にも組み込んでいた。おそらく、森高はこれを全国でやっている。

 ツアーに合わせて刊行されたフォトエッセイ『「この街」が大好きよ』(集英社、20年)を確認すると、各地で名所を歩き、名物を食べているからだ。写真や文章から、かなり地方の建築を訪れたことが分かる。

 例えば、青森のアスパムやアウガ、鶴岡の加茂水族館、ショウナイホテル・スイデン・テラス(設計者の坂茂にも言及)、荘銀タクト鶴岡(ライブの会場)、富岡製糸場、ファーレ立川、朱鷺メッセ、金沢の茶屋街や旧石川厚生年金会館、長野と甲府の善光寺、豊橋市公会堂、熱田神宮、彦根城、あべのハルカス、狭山池博物館(安藤忠雄に言及)、吉備津神社、大塚国際美術館、熊本城、日田市・豆田町の街並みなどである。

 ホテルとコンサート会場だけを往復するのではなく、それぞれの街を本当に楽しんでいることに感心させられた。情念に基づく演歌がご当地ソングの主役だったのは、昭和時代である。が、50歳を過ぎた森高の感覚は、カジュアルに地方都市の魅力を伝えるものだろう。


(いがらし・たろう)建築史家・建築批評家。東北大大学院教授。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」などの展覧会を監修。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、18年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。『建築の東京』(みすず書房)ほか著書多数。



 

  

   

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