【プリツカー賞】RCRアーキテクツの3人「建築は人生そのもの」 東京で授賞式・講演会 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

公式ブログ

【プリツカー賞】RCRアーキテクツの3人「建築は人生そのもの」 東京で授賞式・講演会

(右から)ラファエル・アランダ氏、カルメ・ピジェム氏、ラモン・ヴィラルタ氏

 プリツカー賞の授賞式が20日、東京都港区の迎賓館赤坂離宮で開かれた。今回の受賞者はスペインの建築家、ラファエル・アランダ氏、カルメ・ピジェム氏、ラモン・ヴィラルタ氏の3人。いずれもカタルーニャ地方オロット出身で1988年、故郷に建築設計事務所RCRアーキテクツを設立。地域に根差しながら共同制作による建築活動を展開している。特に日本の建築に強い関心を持っており、90年に初めて日本を訪れ、京都の庭園や高野山の寺院に大きな影響を受けたという。
 今回のプリツカー賞の審査団は選考理由の中で、グローバル化の進展に伴い地域性や地域独自の芸術、風習を失うことへの強い危惧の念を示しながら、この3人の活動について「グローバル化する世界の中で普遍性と地域性を両立できるかもしれないという可能性を示している」と評価した。
 授賞式が日本で開催されるのは89年の奈良・東大寺以来、28年ぶり。式典には天皇、皇后両陛下がご臨席したほか、歴代の日本人受賞者も顔をそろえた。
 公開講演会は22日、東京都文京区の東京大学安田講堂で開かれた。同賞を主催するハイアット財団と東大工学部建築学科が共同主催したもので、会場にはリチャード・ロジャースや妹島和世氏、西澤立衛氏、坂茂氏ら同賞の歴代受賞者を始め、国内外から数多くの建築関係者が詰めかけた。
 「Shared Creativity(シェアード・クリエイティビティ)」をテーマとした講演では、生まれ故郷であるスペイン北部の町、オロットに建築事務所RCRアーキテクツを構え、30年にわたって展開してきた共同制作による建築活動を紹介した。
 この中で「取り巻く環境のすべてが私たちをインスパイアする」(ピジェム氏)というように、自然環境やランドスケープを注意深く観察し、その場所性を考察しながら「そこにしかないデザイン、ここにしか存在できない建築」を生みだしていく創作姿勢や、「3人で手が6本、声は1つ。ジャズのように一人ひとりが楽器を奏でながら1つの仕事をしている」(ヴィラルタ氏)という緊密な協働のあり方を、『トソルバジル競技場』や『スーラージュ美術館』『ベルロック・ワイナリー』『ラ・リラ劇場の公開空地』『レス・コルズ・レストラン』などの作品を通して説明した。
 また1990年に日本を初めて訪れたことが「すべてのインスピレーションを与えてくれた。私たちが変わり、ここからスタートして3人の共同制作のスタンダードとなった」(ピジェム氏)とし、京都や奈良の寺院や庭園などに大きな影響を受けたことを明らかにした。それが空間の内と外をつなぎ、建築とその周囲のランドスケープや自然を一体化させていくなど、「すべてを融合させフュージョンさせていく」「場の特性を生かしてプログラムをつくっていく」といった一連の作品に通底する建築作法につながっている。
 講演後、聴講した学生からの質問にも答え、素材を重視し、そのためにもそのルーツ(起源)をより深く理解することが大事だとする考えのほか、「建築は常に情熱を持って取り組んでいるものであり、職業というより私たちの人生そのもの」という思いを表した。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら