インタビュー 国土交通省技監 吉岡 幹夫氏/モデル現場の成果を水平展開

国土交通省技監 吉岡 幹夫氏
建設業は、災害の多い日本でインフラ整備の担い手、地域の守り手としての役割を担うエッセンシャルワーカーだ。いま建設業においても将来の担い手確保が大きな課題であり、他産業と比較して低い生産性を高め、働き方の変革を進めるため、国土交通省は「インフラ分野のDX」を推進している。
2022年3月にアクションプランを策定し、8月にインフラ分野のDX推進本部会議でアクションプランのネクスト・ステージに向けて「インフラの作り方」「インフラの使い方」「インフラまわりのデータの伝え方」の変革に取り組むことを確認した。今年度内にアクションプランの進捗状況を確認し、ネクスト・ステージに向けた方針をまとめる予定だ。
――ICT施工の導入状況は
直轄工事で公告する工事の約8割でICT施工が実施され、都道府県政令市における実施件数も5年間で約300件から約2500件に増えている。企業規模で見ると大手建設企業は9割がICT施工の経験がある一方で、中小建設企業は受注企業全体の約半分程度にとどまる。中小建設企業に取り組んでもらうため、小規模な現場でもICT施工を活用可能な環境整備を進めている。
その一環として小型マシンガイダンスバックホウを用いたICT施工の実施要領やスマートフォンなどモバイル端末による出来形管理要領を整備した。できるところから取り組んでもらうことで中小建設企業にICT施工が浸透し、全体としての生産性向上を期待している。
――i-Constructionモデル事務所で取り組んでいる期待のプロジェクトは
BIM/CIMで重要な点は、設計、施工、維持管理へとデータをしっかり共有することだ。その意味で近畿地方整備局豊岡河川国道事務所はBIM/CIM設計データのICT建機での活用や道路台帳での活用に向けた取り組みを進めている。ICT建機に取り込む最適なデータ精度検討や詳細なデータが必要な特殊部での活用、維持管理に活用しやすい方法を検討している。
このほか、中部地方整備局新丸山ダム工事事務所では、地形、堤体、設備、地質の統合モデルを作成し、工事実施計画、土配計画の事前検討を進めている。
直轄工事の約8割でICT施工が導入されている状況を踏まえ、モデル現場の成果を水平展開しつつ、ICTの活用が当たり前となるように取り組んでいきたい。
――技術開発の動向などを踏まえた今後の施策展開は
インフラDXを推進する上でさまざまな技術を活用することが重要だ。例えば建機メーカーは自動化・自律化に向けた技術開発を進めているが、それに加えてスタートアップなど多様な企業の革新的技術の取り入れていくことが肝要だ。今年度中には、建設現場の無人エリアでの自動施工技術を導入するための安全ルールを公表する予定だ。
また、ICT施工も工種ごとの効率化を求めてきたが、今後はICTにより作業状況を把握して、工事全体の生産性向上を目指す、次の段階に進めていく。
建設業を将来に向けて持続させるためには、魅力ある産業として若い世代に選ばれるようにしなければならない。国交省は23年をインフラDXの“躍進の年”に位置付け、DXによる変革を一層加速させる。
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