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【レジリエンス社会へ】名古屋大学名誉教授 あいち・なごや強靱化共創センター長 福和 伸夫氏

最終更新 | 2023/05/19 13:41

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建築基準法の見直しを 事前対策投資で被害軽減

福和 伸夫氏

 福和伸夫名古屋大名誉教授は、「南海トラフ地震が発生すれば日本のリソースを超える被害が生じる」と警鐘を鳴らす。現行の耐震基準のままでは「人命は守れても社会生活や経済活動を継続することはできない」と指摘する。関東大震災から100年の節目を契機に、地震工学の専門家として「建築基準法の見直しを真剣に検討すべき」と訴える。

 「関東大震災で日本は約10万5000人の命を失い、国家予算の3倍の損失を被った。東京は帝都復興計画に基づき、発災直後からいち早く復興計画に着手し、いまの東京の礎をつくった」と、事前の復興計画づくりの重要性を説く。一方で、「東京の被害は土地利用の失敗が引き起こした人災」と断じる。

 「関東大震災で東京では約7万人が命を落としたが、このうち約6万人は隅田川の東側や日比谷の入り江など、地盤が悪いところに住んでいた。現在、そうした場所に超高層ビルが林立している。人口集中に伴い、東京はまた危険な地域に町を広げ、バリューエンジニアリングと称して建築基準法ぎりぎりの建物を次々に建てている。本当に関東大震災の経験を反省しているのだろうか」と疑問を呈する。

 関東大震災後、1924年に市街地建築物法が改正され、許容応力度設計において材料の安全率を3倍とし、地震力は水平震度0.1が要求されるようになった。戦後、建築基準法がつくられた時に安全率は半分の1.5に引き下げられ、水平震度は2倍の0.2に引き上げられた。これは東京・本郷の揺れが300ガルだったからだ。現行も基本的に1次設計は同じ耐震基準になっている。「昔の建物は壁構造で非常に堅かった。いまは柱と梁のラーメン構造が増えた。建物が揺れやすくなっているので倒壊は免れるかもしれないが損傷はする。その建物で日常生活や社会活動を続けることはできない」と指摘する。

 日本では1891年に発生した濃尾地震を機に震災予防調査会がつくられ、地震工学や耐震工学が出発した。「内陸直下型地震は南海トラフ地震が起きる前後に連続して起きやすい。現行の耐震基準は人命最優先で建物損傷は許容する設計になっている。1度目の地震で広域に建物が損傷した場合、事業継続ができず、日本は立ち行かなくなる」と強調する。

 近年、耐震診断義務付け建築物の耐震診断結果が一部の自治体から公表されている。「国によると、第1次緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は約3割だが、東京を除くと約2割にととどまっている。これも現行の耐震基準に適合したに過ぎず、命を守るだけで社会は守れない。特に民間建築は耐震化が全然進んでいない」と問題を提起する。

 大規模地震による被害を正確に試算することはできない。「備えを万全にして被害の軽減に努めるしかない。事前対策に投資して被害を減らす。そうすることが災害発生後に活躍できる建設業の維持にもつながる」と考えている。

 「建築基準法という1950年につくられた命を守る最低限の基準のままで良いのか。法をクリアしていても事業継続は困難なことを国民にもっと周知しなければならない。技術の進歩によって、われわれは耐震基準ぎりぎりの建築物を建て続けきた。今年は関東大震災から100年の節目。より良い社会をつくるために建築基準法や耐震基準はどうあるべきかを真剣に考え直すべきだ」と訴える。



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