【BIM/CIM未来図DX】中央復建コンサルタンツ(上) | 建設通信新聞Digital

11月1日 金曜日

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【BIM/CIM未来図DX】中央復建コンサルタンツ(上)

将来の事業創出に向け「未来社会」描く/ICT戦略など7室が始動
 建設コンサルタント業界の中でも先行してBIM/CIMに取り組んできた中央復建コンサルタンツが、BIM/CIMデータを「賢く使う」ことで、新たな業務領域を切り開こうとしている。将来の活動領域として「未来社会」分野を定め、それを実現するための基盤ツールにICT活用を位置付ける。BIM/CIMを出発点にインフラDX(デジタルトランスフォーメーション)の領域に踏み込む同社の成長戦略を追った。

 2024年度までの現行3カ年中期経営計画で「本質を極める」をテーマに掲げる同社は、維持管理、防災、マネジメント、海外を重点分野に位置付けるとともに、未来社会分野への投資や技術開発として、インフラDXとSDGs(持続可能な開発目標)への対応強化を掲げた。今年4月には「未来社会創造センター」を組織し、将来を見据えた新たな業務領域の開拓に向けて動き出した。

 未来社会創造センター長の坪村健二取締役は「この組織は社としての明確な姿勢であり、社内外に向けて未来へと突き進もうとする当社の本気度を示した」と強調する。センターは公民連携まちづくり、PM・CM、技術マネジメント、メンテナンスイノベーション、オープンイノベーション、ICT戦略、万博・スマートシティの7室で構成し、総勢約50人を集約した。

 各室は自らの担当分野の「未来社会」をイメージしながら、これまでの経験や新たな技術を駆使し、他の部門や室と連携しながら市場開拓の戦略を立案する。室長ら中心メンバーが集まる全体会議は隔週のペースで開かれ、将来に向けてどのようなビジネス展開が可能か否か、その道筋を描いている。

BIM/CIMモデル


 従来の事業創出は、利益確保を重視した戦略設定が前提だっただけに、収益性確保が難しいと想定される領域への開拓には消極的な姿勢になってしまっていた。同センターは「各室が未来社会へのイメージをしっかりと描きながら、すぐに利益が出なくても将来的にビジネスとして成立させる」ことを前提に活動を始めた。

 その中でもICT戦略室は、各室の描くビジネススキームをデジタル技術の活用で下支えする役割を担い、各室と密接な連携を図っている。国土交通省のBIM/CIM原則化を背景に、建設コンサルタント分野では3次元設計の時代が幕を開けた。今後は調査から設計、施工、維持管理に至るまで一貫してBIM/CIMデータがつながる流れとなるだけに、そのデータを各フェーズでどう活用していくかが強く求められている。

 同社は07年に全社技術開発プロジェクトとして3次元設計への取り組みをスタートし、業界の中で先行してBIM/CIMに取り組んできた。森博昭ICT戦略室長は「BIM/CIMモデルを作ることに注力してきた時代は終わり、いまはBIM/CIMデータを賢く使うフェーズに入った」と強調する。ICTを利活用しながら業務を効率化していくことがBIM/CIMの目的であり、そのためにはモデルの中に組み入れた属性情報をどう有効に活用するかが重要になってくる。「ICT戦略室では賢く使うためのツール開発に力を注いでいる」と説明する。

未来社会分野のイメージ


 業務基盤となる主力の設計ツールには、オートデスク製品を位置付け、自由にBIM/CIMの関連ソフトを活用できるパッケージ契約「AECコレクション」を充実させており、社内では技術者約500人が無理なく活用できる業務環境を実現している。3次元研修も320人が受講済み。日常的に3次元設計が浸透してきた。坪村センター長は「これからは蓄積したデータをどう使い、業務改革や新たな業務にどう結び付けるか。未来社会の実現に向け、ICT戦略室の役割は大きい」と強調する。



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