【記者座談会】動き出したICT浚渫工事 マリコン各社の動き活発に | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【記者座談会】動き出したICT浚渫工事 マリコン各社の動き活発に

水中ソナーを使う五洋建設の現場


A 国土交通省が推進するi-Construction施策のうち、2017年度から試行が始まった浚渫工へのICT活用の進捗はどうか。
B 6月30日時点では北海道開発局、関東地方整備局、四国整備局でそれぞれ2件ずつ工事契約を締結済み。公告中の案件は東北整備局で2件、北陸整備局で1件、近畿整備局で4件、九州整備局で4件となっている。17年度は全国で30件程度の発注を予定しており、順調な滑り出しではないだろうか。
C 契約済みまたは公告中の案件を発注方式別に見ると、必要経費を当初設計で計上する「発注者指定型」は10件、総合評価落札方式でICT活用計画を評価し、設計変更で必要経費を計上する「施工者希望型」(いわゆる手挙げ方式)は7件となっている。
A それぞれの方式の違いは。
C 2億5000万円以上の工事は発注者指定型、この金額未満の工事は施工者希望型に区分している。浚渫工を始めとする港湾土木工事の発注ランクは2億5000万円がA等級とB等級を分ける基準となっており、B等級以下の地元企業がICTを活用したいという希望がある場合に「施工者希望型」で反映できるような仕組みを採用している。
A 来年度以降の見通しはどうだろう。
B 国交省は17年度に実施した試行工事について受注者側から結果をフォローアップし、来年度以降の発注に生かすとしている。浚渫工事自体の件数にも左右されるが、ICT活用の方向性に変更はないだろう。最終的に港湾工事の全プロセスでi-Conの標準化を目指している国交省としては、浚渫工を皮切りに他工種への取り組みも広げていきたい考えだ。
D マリコン各社のICT活用に向けた動きも活発になってきた。ただ、今回のICT活用工事で採用するナローマルチビームは、既に1990年代から水深測量の手法として使われてきたものだ。最先端の現場は既にリアルタイムに水中の状況を映像化している。そもそも浚渫工事の水深測量に音波探査が採用されたのは80年代後半にさかのぼる。一方向に音波を出すシングルビーム測量は現在、国交省の定める検査手法に位置付けられているが、業界では海底地形を面的にとらえるナローマルチビーム計測が既に一般化しており、ナローマルチビーム計測が業界の標準という声は多い。ICT活用工事での採用により、ようやく標準化への道筋が整う。
C 既に最先端の現場では超音波を立体的に照射し、海底の地形や構造物の形状を把握できる水中ソナーを使った施工に取り組んでいる。リアルタイムに水中の状況を映像化できるから、より精度の高い施工を実現できる。
B 直下に音波を発射するシングルビームで面的な測量を行う場合、調査船は何往復も航行する必要があるが、扇状に音波を発射するナローマルチビームではより効率的な測量が実現できるから、その点では生産性向上になる。ただナローマルチビームも2次元ビームによる測量のため、リアルタイムに海底形状を把握するのは不向きだ。
D 詳細な出来形管理を実現するには、最先端の水中ソナーを使わないと実現できない。劣化診断など維持管理段階でも効果的だ。設計から施工、維持管理を見据えたCIMとの相性も良く、水中ソナーの活用は浚渫工事で理想と言えるけど、システムは1セット6000万円程度と高額だから、保有するマリコンは限定されるのが現状だ。

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