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5月2日 金曜日

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【技術裏表】ZEエナジー松下康平社長/廃棄物炭化で石炭代替

◇エネルギーの地産地消を促進/5年後に全都道府県稼働目指す

松下社長

 バイオマスの炭化装置、ガス化装置の製造・販売を手掛けるZEエナジー(東京都中央区、松下康平社長)は、建築廃材を含むさまざまな廃棄物を炭化・再利用する「炭化センター」の拡大を目指す。当面の目標は5年後に47都道府県全てでの設置・稼働だ。「かつて炭化の会社は全国に数社ほどというニッチな領域だったが、需要がここ数年で急激に高まった」という注目を追い風に、炭化のノウハウを駆使して環境負荷低減やエネルギーの地産地消を進める。

 炭化センターの基礎となる技術は、同社の炭化装置技術だ。建築廃材や間伐材、おがくず、ウシやニワトリなどの畜糞、スラッジ(汚泥)、タマネギの皮や魚のアラなどの食品加工残渣(ざんさ)、ビルから排出される茶がらや紙ごみなど、さまざまな廃棄物を蒸し焼きして炭化物にする。小規模な装置では年間1万t、大規模なら年間10万tの炭化物を生産する。

炭化装置(バッチ式)の構造図


廃棄物を投入する炭化装置


◇再利用や分別簡単に/廃材から金属を分離

 炭化すると廃棄物の悪臭や体積を減らせるほか、活用の幅も広がる。用途の例は土壌改良剤、融雪剤、石炭代替燃料など。珍しい事例では、縫製工場のミヤモリ(富山県小矢部市)から発生する服の裁断片を炭化させて芯とする「服の鉛筆」を開発した。

 炭化装置の製造・販売のほか、企業から依頼を受けて廃棄物の炭化テストを行い、できた炭化物の分析・加工・活用方法まで提案するコンサルティングも手掛ける。元の廃棄物の種類によって炭化物の成分が異なり、用途によって複数の炭化物を混合する場合もある。「炭化装置を扱い始めて30年ほどになる。処理能力1日当たり100t程度の大規模な炭化装置を製造した実績と、さまざまな廃棄物を混合して活用可能とするノウハウは当社唯一のものだ」と強みを説明する。コンサルティング実績は2024年7月現在で約300社に上る。

 建設関連企業からの需要は、建物の解体で発生した廃材の炭化が多い。木材と金属が混在した廃材を装置に投入すると、木材だけが炭化して分別が容易となる。樹脂が付着したアルミを装置に入れて樹脂を気化させ残ったアルミを再利用する用途で、サッシ工場が装置を採用した例もある。

生産した炭化物


◇電力自給で災害時対策/環境負荷低減にも貢献

 炭化センターでは、建設業者や中間処理業者から建設廃棄物や風倒木材、炭化物を集めて、石炭代替燃料を生産する。工業団地や工場跡地の敷地1-2ha程度にセンターを建設した場合、1ヵ所当たり年間数万tの石炭代替燃料を生産できる。

 生産した燃料は、従来の石炭と同じ設備で使用できる。石炭ボイラーや石炭火力発電所の熱源、製鉄所の加炭剤や石炭代替品向けに売却する想定だ。需要家の近隣から集めた廃棄物由来の燃料で化石燃料を代替すれば、環境負荷低減とエネルギーの地産地消を促進できる。

 センターは排熱発電により電力を自給自足できる。「災害が起きたとき、がれきを炭化して処理しつつ避難所などの蓄電池を充電するなどの拠点としても役立つ」と災害に対するレジリエンス面の意義も踏まえ、なるべく多くの地域に設置したい方針だ。設立・運営のスキームは、地元の建設業者や中間処理業者との共同出資を想定する。

◇ガス化発電装置開発/間伐材などが原料に

 さらに炭化技術を応用して、バイオマスガス化発電装置も開発。発電所を福島県富岡町に建設中で、25年9月の稼働開始を見込む。

 バイオマスガス化発電では、間伐材などの未利用材を原料として、可燃性のバイオマスガスと炭を生産する。このガスでガスタービンエンジンを稼働させて発電する。従来のバイオマス発電施設と比べて、中山間地域での稼働に向いている。26年をめどに、バイオマスガス化発電所も全都道府県での稼働を目指す。

 

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