新社長・長谷工コーポレーション 熊野聡氏 | 建設通信新聞Digital

6月12日 木曜日

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新社長・長谷工コーポレーション 熊野聡氏

【“長谷工リスペクト”伝える】
 長谷工コーポレーションの社長に熊野聡氏が就いて2カ月余りになる。同社の社員に継承されてきた“長谷工DNA”について、「当社のDNAは、行動力、目標達成力、工夫力、団結力だ。これら四つの力を実践し、困難も乗り越えてきた」と語る。その上で、「長谷工コーポレーションという会社を好きになってほしいし、社員に“長谷工リスペクト”を伝えていくのが役目だ」と力を込める熊野社長に、今後のかじ取りなどを聞いた。--就任の抱負は
 「企業を進化、成長させて、逆風下でも耐え抜ける体質にしていきたい」
 「この約10年、資本を積み上げて体力を付けてきた。人材と資産の効率性、生産性の向上は、今期から始まった中期経営計画の大きな柱となる」
--市場環境をどう見る
 「建設事業については受注環境が良好であり、この傾向があと数年は続く。分譲マンションのマーケットにも大きな変化は見られないものの、価格は高騰傾向にある。今後、グロスやグレードの調整により顧客の需要に応えられるよう、価格の調整局面に入るのではないか」
--エリア別の戦略は
 「建設部門は、三大都市圏での事業を堅持する。協力会社を含め、ネットワークを構築して競争力を維持するには、一定の需要がないと優位性が出ないからだ。三大都市圏以外では、他のビジネスチャンスや住宅以外を手掛ける可能性を検討する。地方部では、札幌、仙台、広島、福岡、沖縄のエリアを中心に、デベロッパーとしての役割を果たしていく」
 「海外事業は、デベロッパー、ゼネコンの両面から挑戦しており、どのエリアで事業を展開するかを模索している。ゼネコンとして国内でマンションを建設してきた品質が海外でも認められ、価格に転嫁できるなら優位性が持てる。デベロッパーとしては、北米を中心に賃貸マンションに投資している。将来的には管理、サービスといったソフト部分にも事業を広げたい」
--新規事業については
 「従来のように強みを再認識して競争力を伸ばすだけでなく、ボトムアップで新しい事業を考える、新規事業アワードを創設したい。秋ごろから具体的に始動予定だ。会社の将来を自分たちで考える機運を醸成する」
--生産性の向上は
 「DX(デジタルトランスフォーメーション)については、前中計で池上一夫前社長(現代表取締役兼副会長執行役員)が注力し、投資してきた実りがこれから出てくるはずであり、その効果の検証を進めたい。また、当社の施工は、工種のつなぎ部分のロスが少ないと評価されているが、このロスをもっと少なくすることで生産性を高めていく」

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 (くまの・さとし)1985年3月神戸大経済学部卒後、同年4月長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。2020年6月取締役兼常務執行役員営業部門・開発推進部門管掌兼関西営業部門中四国不動産営業担当兼グループ分譲・販売・シニア事業管掌、23年4月同専務執行役員営業管掌兼グループ管理・賃貸・シニア事業管掌、24年4月代表取締役兼専務執行役員営業管掌兼グループ管理・賃貸事業管掌を経て、25年4月から現職。趣味は街歩き。「まちを見ながら歴史を感じ、変わる姿を見るのは楽しくわくわくする」と笑顔を見せる。奈良県出身。61年9月7日生まれ、63歳。

◆記者の目
 長きにわたり営業畑を歩み、座右の銘である「誠実」な対応で、顧客からの信用を得てきた。高校の校訓でもある「至誠」という言葉も大切にしている。「これまでは営業として前を向いて走ってきた。社長に就任してからは視野を広げ、広範囲に攻めも守りも対応しなければならない」と姿勢を正す。記者の質問に丁寧かつ的確に答える姿が印象的であり、社員やステークホルダーに細やかな気配りをしながらも、決めたことは着実に実践し、結果を残す強さが垣間見えた。