【今後の成長戦略の柱は?/国内も国外も選ばれる会社に】
鹿島の経営企画部長に金綱伸一氏が就いた。2026年3月期は売上高、利益ともに過去最高を更新し、国内ゼネコンで初めて売上高3兆円の大台に乗せた同社。好業績の持続と成長の鍵を握るのは「国内開発事業と海外事業だ」と強調し、主力の国内建設事業については、それを支える協力会社との関係強化も重視する。次期中期経営計画の策定など経営の参謀役を担う金綱氏に、今後の事業戦略を聞いた。
--現状の経営認識を
「前期利益は、想定以上に良かったというのが率直な感想だ。今期も数年前には想像もしなかった高い水準にある。国内建設事業は良い事業環境が続き、手持ち工事も豊富にあるため繁忙が続く。働き方や仕事の進め方、技術のアップデートは必須だ。人的資本投資、デジタル化、技術開発といった歩みも加速させる」
--建設事業で重視することは
「施工能力を大幅に超える仕事量になると、品質、工程、コストのあらゆる面で悪循環が起きる。適正な量の見極めが重要であり、受注前から着工まで、計画段階にどれだけリソースをかけられるかが勝負となる。着工時期や規模も含めてしっかりと仕事量をコントロールする必要がある」
--協力会社との関係強化について
「今後の売り上げと利益を考える上で重要なのはサプライチェーンであり、大切にしたいのが協力会社との関係だ。支払い条件の改善といった財務基盤の強化などにも取り組んでおり、顧客だけでなく、協力会社にも選ばれる会社を目指し続ける」
「手戻りが減り、少ない人数で仕事をこなせることは協力会社にとってもメリットになる。当社の考え方ややり方を一方的に示すのではなく、現場作業を省力化する『型枠一本締め工法』のように、現場改善につなげる技術開発も続け、技能者たちに『一緒に仕事をして良かった』と思ってもらえる企業でありたい」
--開発事業の進め方は
「投資額が大きくなり、有利子負債も結構な額になっている。当社単独で開発した方が大きな果実を得られるのは間違いないが、資本効率を考え、他社と組む共同事業化で資金負担を減らし、効率を上げる試みを進めている。パートナーには不動産会社のほか、良い土地を持ちながら事業化につなげられていない企業も念頭に置く。CRE(企業不動産)戦略に当社が関わり、共同で事業を生み出したい」
--海外事業をどう伸ばす
「開発事業はもともとホテルなどリゾート系が中心だったが、景気変動を受けやすい分野だ。特定のアセットに頼る“一本足打法”にはリスクがあるため、市場動向を見ながら種類を広げている。ベトナムでは当初、倉庫を開発するつもりだったが、市場動向を見て工場の方が良いだろうと方針転換し、貸工場にしたことでうまくいっている。労働者が少ないシンガポールでは、当社の自動化施工に関心が寄せられているなど、海外でも強みを生かして選ばれる会社を目指す」
--次期中期経営計画の方向性は
「今は市場分析や3年間の反省を基に論点を整理している。成長基調を継続する計画にすることを考えており、それだけの実力がある。建設業は固定の生産ラインを持たず、時代に合わせて柔軟に動ける業態だ。収益源としてきた“つくる・育むプロセス”に加え、リニューアルのような“再生するプロセス”もビジネスチャンスになる。提案を通して社会的な流れをつくるのもわれわれの役割だ」
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(かねつな・しんいち)1994年3月東大経済学部経済学科卒後、同年4月鹿島入社。2014年1月東京土木支店管理部現業グループ長、18年10月総務管理本部総務部リスク管理グループ長、20年4月秘書室(社長)秘書役を経て、26年4月から執行役員経営企画部長兼秘書室。千葉県出身。70年11月生まれ、55歳。
