自分なりのカスタマイズを
「まずはツールパレットとスクリプトの活用に取り組んでほしい」。芳賀氏はAutoCADを使った時短マスターへの道を踏み出す上で、二つの機能習得を挙げる。CADオペレーター業務のお困りごととして「同じことの繰り返し」「大量データ作業」「人為的ミス」がある。「この二つの機能を習得することが解決への出発点になる」と訴える。
ツールパレットは、よく使うコマンドやブロック(複数のオブジェクトをまとめた図形)、ハッチングパターン(図形領域の塗りつぶし表示)を管理するツール。目的別にパレットを設定でき、図面中のオブジェクトをドラッグ・アンド・ドロップで載せることが可能だ。「自分なりにカスタマイズすることで作業効率はより高まる」と強調する。
設計作業では一つの図面の中に複数の画層(レイヤー)を作成するが、ツールパレットを使えばレイヤーや線種の設定からハッチング、縮尺の設定まで一括で管理できる。芳賀氏は通常の操作でレイヤー確認(120秒)、レイヤー作成(30秒)、中心線作成(30秒)までトータルで約180秒かかる作業を、ツールパレットを使えばパレットへの登録(20秒)と中心線作成(5秒)の計25秒で完結でき、「約7倍もの作業効率につながる」と試算している。
繰り返し作業が求められる場合、中心線作成(30秒)の作業を10回続けると、トータルで300秒かかるが、ツールパレットによって中心線作成(5秒)を10回作成すると「わずか50秒で済み、作業効率は約6倍」と付け加える。ファイルに未定義のレイヤーや線種を自動作成し、設計図面の縮尺などをプロパティーであらかじめ設定することも可能で、より効率的な作業環境を実現できる。
AutoCADの機能にツールパレットが採用され、20年以上が経過しているが、「使いこなしているユーザーは意外に少ない」という。ハッチングの模様も100種類ぐらいあるだけに、よく使うお気に入りの模様を登録しておくだけで、作業はよりスムーズに進む。「カスタマイズしたツールパレットの設定を、チーム内で共有することでより効果的な共同作業も実現する」とアドバイスする。
テキストファイルを使って特定の動作を指示する「スクリプト」機能も同様だ。芳賀氏は「メモ機能だけではなく、Excelを積極的に使ってより自動化を実現してほしい」と強調する。Excelで複雑な計算や大量のデータを処理し、レイヤー名や線種、色などの図面設定を一括変換することで「大量の図面作業もより効率的に進めることができる」という。
通常、円作成・複写(35秒)から円移動(120秒)、ポリライン作成(60秒)までトータルで215秒かかる作業が、スクリプトを使った場合には数値記入(30秒)、スクリプト作成(50秒)と実行(40秒)で120秒と約4割の時間短縮となる。この作業を10回繰り返した場合、「約3倍のスピードアップになる」と訴える。
芳賀氏は「CADオペレーターの中には試行錯誤しながらより効率的な作業を追求している人々も多い。講師をする中で受講生が実践しているアイデアがあれば私自身も吸収しているように、皆さんもAutoCADの機能を最大限に引き出す時短マスターになってほしい」と呼び掛ける。
◆大塚商会が10日に無料のウェビナー
ウェビナーの参加は無料。大塚商会のホームページで10月8日午後1時まで受け付けている。この中で芳賀氏はAutoCADの作業効率を向上させるコツをわかりやすく解説する。