建設工事のあるべき姿について、「安全面や環境、コスト、工期などについて国民の視点で考えることが大事だ」と説き、環境性、安全性、急速性、経済性、文化性を建設の五大原則として提唱。「5つの視点から建設を考え、数値化・チャート化し、最も有効な工法を選定することが重要だ」と指摘、「ライフサイクル全体を見据え、壊すことも前提として設計をすべきだ」と主張してきた。「五大原則に当てはめ、数値化し、工事をする前に確かめる。それにより、国民のコンセンサスも得られるだろう。五大原則を一般化、世界の基準にしたい」との強い思いを語る。
その五大原則に照らし合わせてみると、「圧入工法は無振動・無騒音で軽量かつコンパクト、安全性も高く、仮設レス施工で経済性も高い」と、杭工事における優位性を強調する。その言葉を裏付けるように、躯体部と基礎部が一体となった「許容構造部材」を油圧による静的荷重で地中に押し込み、地球と一体化した粘り強い構造物を構築する「インプラント工法」は、東日本大震災の復興工事や地震・津波対策工事での採用が増えてきた。
「杭を打ち込む方法として一番後に開発されたのが圧入工法だが、杭を打つには、最も良い原理を持っており、ますます発展することは間違いない」と確信する。インプラント工法を歯に例えると、入れ歯とインプラントの関係で、フーチング工法が入れ歯で、インプラントがインプラント工法ということだ。地球に打ち込んでいるから津波や増水で堤防が切れることなく、その役割を果たすことができる。同工法による2000年には完全遮水壁築造工法を開発し、福島第一原子力発電所事故に際して、その年の7月に同工法を活用した対策を東京電力に提案したという。
防波堤については、次の展開に入っている。「コンクリートの代わりに高耐力ポリエステルベルトで防波堤をつくり、津波から守ることを共同研究している」ことを明かし「実証場を作って見せていく」考えだ。
さらに、「地下は分からない。分からないから可視化しなければならない」と地下の可視化も提案する。直轄の高知海岸堤防改良工事では、杭に各種センサーを同社の負担で埋め込み、遠隔通信により本社でひずみや間隙(かんげき)などのデータを収集している。「振動でどうなるかなどを記録することで、比較ができ、次の構造物の設計に生かせる。例えば橋を50年経ったから壊すのではなく、50年経っても地下は新規のままかもしれないし、30年でぼろぼろになっているかもしれない。これからは地下を可視化する神経構造物を造っていかなければならない」と新たな提言もする。
また、建築物の改築工事にも注目する。「地下室の壁を基礎にすることを研究している。建て替えに際して、GL(地面)まで壊し基礎はそのままにして、GLから地下室をつくる。ベースを打って地下の解体を始めるという方法で、当社のプラントで実証してみることにしている」
海外については「現状は売り上げの10数%だが、大きな市場があるのは間違いない。14年に設立された日本防災プラットフォームには理事会社として参加しており、大きく伸ばしていきたい」と意欲を見せる。ロンドンで運河下に建設されているカナリーワーフ駅を始め海外での工事にも参画しているほか、ことし4月にはオーストラリアの企業にサイレントパイラー(油圧式杭圧入引き抜き機)を初納入するなど、事業は着実に伸展している。
本社内に実機を展示する「世界杭打ち機博物館オープン」
技研製作所は、高知市の本社内に「世界杭打ち機博物館」をオープンした。世界の杭打ち機の歴史と施工原理の変遷を、各国から集めた実機26台の展示から学べる世界で唯一の博物館で、杭打ち機の歴史を通して、ものづくりの観点からも多くの人に興味を抱かせる施設だ。
同社が1975年に世界に先駆けて発明した無公害杭圧入引抜機「サイレントパイラー」の1号機から最新の機械まで展示している。同博物館は、一般公開日を設け、事前予約のうえ一般の人も来場できる。詳細は同社のウェブサイトで。