【データがひらく未来】AU2024inサンディエゴ① 変革の鍵はAI/データに最大のチャンス | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【データがひらく未来】AU2024inサンディエゴ① 変革の鍵はAI/データに最大のチャンス

 「変革の鍵を握るのはAI(人工知能)だ」。10月に米カリフォルニア州サンディエゴで開かれたオートデスクのカンファレンス「Autodesk University2024」(AU)で、同社のアンドリュー・アナグノスト社長兼CEOは、そう強調し、AIに関する技術開発に注力する姿勢を改めて鮮明にした。ここで重要となるのが“データ”の存在だ。同社のニコラ・マンゴンAECバイスプレジデントが「世界では膨大なデータが生み出されているが、その95%は使われていない。しかし、そこに最大のチャンスが潜んでいる」というように、データにこそ、AIをはじめとしたデジタル技術を飛躍的に進歩させる力がある。

アンドリュー・アナグノスト社長兼CEO


 世界各国の企業が自社技術を紹介するAUエキスポ(展示会)には、オートデスクも出展。「Project Bernini」は、生成AIにより文字やスケッチから3Dモデルを作成できるツールで、簡単な絵を描くと、十数秒ほどでスクリーン上に3Dモデルが出現する。現在のところ研究用の試作モデルで商業利用はできないものの、多くの来場者が興味深そうに操作を楽しんでいた。建設業にも役立つツールになるという。

 エキスポで説明を務めたオートデスク担当者が「ボトルネックは科学技術ではなく、データだ」と強調するように、大量のデータを集約・処理して初めて、精度の向上につながるとし、その価値を強調する。

 大林組も、スケッチや3Dモデルからさまざまなファサードデザインを提案できるAI技術「AiCorb(アイコルブ)」を開発。建築設計の初期段階時、顧客からの要望をその場で具体化し、合意形成を効率的に進められるといい、同社では昨年から社内運用を開始した。

 AUセッションで、この技術を解説した中村拓馬副主任研究員は「社内でアイコルブの有効性が徐々に認知されてきている。今後はアイコルブにゼネコン色を加え、建設時に役立つシステムにしていきたい」と意気込む。一方で、「一番苦労しているのは文化を変えるということ。デジタル技術が当たり前に利用される風土をつくっていくことが求められている」とその難しさも吐露する。

 AIをはじめとしたデジタル技術の普及・活用を促進するためには、デジタル技術が“身近に存在するもの”と認識されるよう人々の心情に訴求する必要性がある。その文化醸成に向け、日本はもちろん、世界中の企業が試行錯誤しながらも積極的にその活用を後押ししている。

 AUではこうした最先端の技術・取り組みを各企業がプレゼンテーション。世界中の人たちが事業の参考にしようと熱心に聴講した。AUへの参加を前に、JR東海の中尾政史建設工事部建築工事課課長代理が「保守は人手不足で、デジタル技術の活用に期待している。各企業のプレゼンテーションを聞き、勉強したい」と話すなど、デジタル技術の導入へ一歩踏み出す企業は少なくない。

Project Bernini、スケッチを描くと3Dモデル(スクリーン内右)が生成される



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