【多様に広がる建設ICT活用⑦】竹中工務店 日本初の"BIMモデル内承認"を適用/承認作業の所要時間を大幅短縮 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【多様に広がる建設ICT活用⑦】竹中工務店 日本初の“BIMモデル内承認”を適用/承認作業の所要時間を大幅短縮

 竹中工務店は、複雑な鉄骨架構が求められる高難易度のプロジェクトに構造系BIMソフト『Tekla Structures』(Tekla)を全面導入し、鉄骨工作図の“BIMモデル内承認”を日本で初めて適用している。鉄骨ファブリケーターによる承認用の2次元詳細図作成が不要となり、従来に比べて所要時間が大幅に短縮した。伊皆武東京本店プロダクト部建築2グループチーフエンジニアは、「詳細図作成の代わりに、Teklaモデルでやりきった。モデル内承認により、ゼネコンと鉄骨ファブリケーターの双方に承認時間の短縮や詳細図面作成の削減効果が生まれている」と手応えを語る。

伊皆氏

 今回のプロジェクトは、極めて複雑な形状を実現するため、大量かつ複雑な鉄骨架構への対応が求められた。2次元図面での表現が難しく、BIMモデルを「正」として設計や鉄骨製作を行う必要があり、受注時にプロジェクトチームをつくり、鉄骨ファブリケーターやBIMソフトの選定を戦略的に検討した。

 Teklaは、BIMモデルでの複雑な架構表現や仕口納まり等をモデルに直接配置するなど表現性に優れ、IFC、DWG、PDFなど多様なデータを参照できる。「鉄骨の複雑な仕上がりや取り合いが多く、干渉チェックが重要だった。鉄骨ファブリケーターのTeklaモデルを集約し、取り合いを調整するにはTekla Model Sharing(モデルシェアリング)が有効と判断した」という。

 鉄骨ファブリケーターは4社を選定。使用するソフトをTeklaに統一し、詳細図の段階では全ての承認や鉄骨製作をTeklaモデルで行った。変更や修正があっても2次元図面を切り出すことなくTeklaモデルでやりきった。「付帯鉄骨や二次部材も全てTeklaで入力し、不整合がない詳細な鉄骨モデルを作成した。理論上では正確な鉄骨が製作されるため、作業所は施工計画・品質管理に専念できる」と意義を語る。鉄骨建て方が7割まで進むが、「鉄骨に関する大きな問題は今のところ1カ所もない」ほど大きな成果を得ることができた。

 プロジェクトを進めるに当たり、データの統一性は特にこだわった。竹中工務店は構造設計をRevitで行うが、鉄骨ファブリケーターにTeklaのネイティブデータを共有するために、Revitから出力したIFCを精度良くTeklaに変換できる自社仕様のシステムを開発した。専門知識が少なくても手数をかけず変換でき、オペレーターの負担、ヒューマンエラー削減を図る。

 元請けと鉄骨ファブリケーターの情報共有は、「モデルシェアリング」と「Trimble Connect(トリンブルコネクト)」の二つのクラウドシステムを採用している。

 モデルシェアリングを使用すれば一つの鉄骨モデルを複数ユーザーが共同で作成することが可能になる。同期機能で更新情報をアップロードすれば、各鉄骨ファブリケーターが編集中のTeklaデータに即座に反映され、作業スピードが飛躍的に高まる。トリンブルコネクトは、BIMモデルを利用した関係者間の情報共有に活用。ToDoリストを質疑に活用すれば、メモに記載した内容を竣工後も残し、判断理由をアーカイブできる。

 また、モデルシェアリングを活用して、Teklaモデルだけで承認を行うための「部材承認機能」「製品承認機能」をトリンブル・ソリューションズと共同開発した。

 部材承認機能でTeklaモデルの部材をクリックすると材質など属性情報を確認できる。構造設計者や施工図作成者、作業所職員など最大7人がTeklaモデルに入り、「OK」「NG」を判定する。NGの場合は担当者に割り当てられた色が表示され、コメントも付与される。これまで施工図担当者、作業所、設計者の順にチェックしていたが、一斉にチェックできるようになり、各個のチェック期間を確保しつつ、全体所用期間が3分の1に縮小した。モデル承認により鉄骨ファブリケーターが元請けに提出する詳細図も不要となり、従来の鉄骨詳細図作成に比べ図面作成の労力も3分の1程度になった。

 また、製品承認機能は、ガセットプレートなど二次部材が取り付けられた柱や梁の製品構成を表示し、正しいかどうかを判定する。

 伊皆チーフは、「複雑なプロジェクトに対応するためにBIMモデル内承認を採用したが、一般の建物は確認の所作がよりシンプルで、もの決めがしっかり出来ている事が前提となるが、フィルタ機能などでまとめて承認できるため効果はより高まるだろう。構造設計者や鉄骨ファブリケーターの期待も大きい」ことから、さらなる展開を見据えている。

Teklaのモデルシェアリングが様々な効果を発揮した



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