【記者座談会】25年度予算案が閣議決定/足立議員が逝去 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

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【記者座談会】25年度予算案が閣議決定/足立議員が逝去

◇気候変動対応へ国土強靱化予算切れ目なく

A 2025年が始まったね。閣議決定された25年度予算案では公共事業関係費が前年並みの6兆円台で維持された。

B 注目すべきは国土強靱化対策だ。現行の5か年加速化対策は時限措置で25年度が最終年度に当たる。しかし、昨年の能登半島での大地震や豪雨災害をはじめ、自然の脅威はこれまでの想定を超える形で頻発化している。

C 確かに昨年を振り返ってみても、都内では8月に排水が間に合わないほどの豪雨で、地下鉄の出口から水がなだれ込んだことがあったね。駅構内が冠水した映像がテレビで流れたけど、さながら鉄砲水のようで恐怖を覚えたよ。

D 「観測史上初」といったニュースの見出しにも意外性を感じなくなった。23年の夏は当時、史上最も暑い夏と言われたが、24年はさらに暑かった。国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰の時代が到来した」と世界に警鐘を鳴らしたのも記憶に新しい。異常な気候変動が定常化している印象だ。

B だからこそ脱炭素が必要なのだろう。とはいえ、相手は長年のひずみが引き起こしている地球規模の現象であり、特効薬とはならない。気候変動に対する緩和策に加えて適応策も必要だ。国土強靭化予算が実施中期計画として法定化されるのも、こうした考えがベースにあると考えられる。

D 問題はスケジュールだね。早期に計画が策定され、現計画からの切れ目ない移行が求められる。国は国民の生命・財産を災害から守る義務がある。その役割を最も強く担うのが国土交通省であり、その施策を形にするのが建設産業だ。責任は一層、重要になってくる。

◇功績多く業界から別れを惜しむ声

A そうした中で、国土強靱化の重要性を長年訴え続けた足立敏之参院議員が急逝した。

建設業関係11団体新春賀詞交歓会では、足立議員の生前の功績をしのんだ


E 年初の賀詞交歓会ではその早すぎる死を悼む声が相次いだ。日本建設業連合会の宮本洋一会長はこれまでの奮闘に謝意を表した上で「痛恨の極み」と逝去を悔やんだ。全国建設業協会の今井雅則会長は自然災害の現場にいち早く駆け付ける姿勢を思い返しながら、その遺志を継ぐとコメントしていた。

B 足立議員は国会での議論で「ダム屋」を自称し、治水のプロの視点から防災・減災の重要性を訴え続けてきた。インフラ整備全体に関しても国際比較を巧みに用いながら、財政当局と意見を戦わせた。

F 数ある功績の中でもTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の創設は大きいと思うよ。08年度の創設直後の6月に発生した岩手・宮城内陸地震では早速大きな効果を発揮した。東北地方整備局担当記者として初陣を取材した印象は強く、その後の活躍ぶりは誰もが認めるところだ。

G 人物としても温かみのある人だった。視察のたびに足立議員自ら現地の状況を丁寧に説明してくれて、懇親の場での満面の笑みも忘れられない。個人的なことだが、前職から転じざるを得なくなった際に「うちの事務所にこないか」とかけてくれた言葉を今でも覚えている。

B 国政の場でも足立議員の抜けた穴は大きい。参院比例で当選しているため、繰り上げ当選となる議員は建設業の職域代表ではない。佐藤信秋参院議員と二枚看板でこれまでやってきたが、今夏の選挙に佐藤議員の後継として立候補する見坂茂範氏一人で3年間乗り切るのは並大抵のことではない。

E 足立議員が掲げてきた「建設産業の再生なくして日本の再生なし」のスローガンの下、改めて業界が一致団結していかなければならないね。

 

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