◇災害リスク評価と戦略的対策を立案
A 2026年度中の防災庁設置に向けて、政府の有識者会議の議論が大詰めを迎えているようだね。
B 有識者会議は政府が強化すべき防災施策と必要な組織体制を検討するため、1月に設置された。これまで7回の会合を重ね、現在は政府への提言となる報告書の取りまとめに向けた議論が進んでいる。
A 報告書はどんな内容になるのかな。
C これまでに報告書の章立てとなる骨子案が示されている。そこでは防災庁が取り組む施策として、分野横断の災害リスク評価と戦略的対策の立案、円滑な事前準備や災害対応などを盛り込んでいる。
B さまざまな関係者が連携できる体制の整備についても明記する。会合でも地域ブロック単位での体制構築が必要とする意見が出ていた。円滑な災害対応に向けて、平時からの官民連携が欠かせない。事前防災、災害対応の両面を担う建設業の役割も一層期待されるところだ。
D 南海トラフ地震のように、過去に例のない被害をもたらし得る災害も念頭に取りまとめる見通しだ。主査を務める福和伸夫名古屋大名誉教授が、そうした災害に国として向き合い、議論することも防災庁の大きな仕事になると話していたことが印象に残っている。
A 組織体制はどうなるのか。
C 報告書には体制面の章も盛り込むが、あくまで必要となる機能に焦点を当てた記述となるようだ。具体的な組織体制や人員は提言を踏まえて政府で検討することになる。
D 自民党は防災庁に関する提言を28日に石破茂首相に提出したほか、全国の自治体からも誘致を求める声が上がっている。今後の動向が注目されるね。
◇那覇空港で新ターミナル整備など検討
A ところで、駐留軍用地の返還後を見据えたまちづくりの検討が沖縄県で活発化している。
E 那覇空港と駐留軍用地約800haの一体開発を目指す「GW2050PROJECTS推進協議会」がグランドデザインを発表した。50年の名目県内総生産11兆円達成を目標に掲げ、那覇空港の新ターミナル整備による世界最高水準の拠点空港化、次世代交通網の構築、沖縄の強みを生かした成長産業の創出などに取り組むとしている。
F 25年度は次期沖縄振興計画に盛り込まれるよう、各拠点の跡地開発のコンセプトや機能配置、実現スキームなどを検討して提言する。40年前半にはまちづくりに着手できるよう早期の基地返還を求めていくそうだ。
A 駐留軍用地の返還は順調に進んでいるのかな。
E 13年4月公表の「在日米軍施設・区域に関する統合計画」で、沖縄本島中南部に所在する嘉手納以南の六つの駐留軍用地約1048haを返還する方針が示され、キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)など早期の対応が可能な一部区域の返還が実現した。このほかの駐留軍用地の返還は、普天間飛行場の名護市辺野古への移設や24年12月に始まった米海兵隊のグアム移転の進展次第だろう。
D 駐留軍跡地開発では横浜市の動きが参考になる。14年6月に返還された深谷通信所約77haは公園や墓地を整備する見通しだ。15年6月に返還された上瀬谷通信施設に至っては27年に国際園芸博覧会の会場となるほか、テーマパークの開発が計画されている。
D 駐留軍跡地のまちづくりは、日米の防衛力の維持が前提だ。全国2万棟以上にのぼる自衛隊施設の集約・再配置などを行う最適化事業の進展にも期待したい。