【記者座談会】建設コンサルは共創の時代に/多機能スポーツ施設の計画相次ぐ | 建設通信新聞Digital

6月7日 土曜日

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【記者座談会】建設コンサルは共創の時代に/多機能スポーツ施設の計画相次ぐ

◇役割拡大へ既存領域を超えデータ・技術を統合

A 建設コンサルタンツ協会が、将来像を示すビジョンの中でオープンイノベーションの推進を掲げたね。

B ここ最近は、スタートアップ(新興企業)との連携が確かに増えている。例えば、ある航空測量大手は、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を立ち上げてAI(人工知能)やロボティクス、SaaS(サービスとしてのソフトウエア)に投資している。別の総合建設コンサルでも、大学発スタートアップを支援するファンドに出資を始めた。

C 新しい技術を単に利用するのではなく、新しいサービスを共に創る方向に意識転換が進んでいる。鉄道関連分野では、エッジAIスタートアップと組んで監視システムを実装するプロジェクトが立ち上がった。コンサル側が開発の当事者になるケースだ。自社の事業領域外とつながって、将来の共創の種を探る動きが活発化している。

A 社内体制の変化も必要だ。

B 最近は専門部署やオープンイノベーション拠点を設けたりする動きも目立つ。他業界との接点を増やしたいという狙いは共通だ。

C 建コン協のビジョンでも、受託から事業主体への転換が明言された。資金調達や法務、マネジメントといった機能を獲得しようという企業の動きを後押しする。

B 技術的にも建設分野での連携から、エネルギーやモビリティー、都市OS(基本ソフト)との接続など、より広域なデータ・技術の統合が求められる時代に入った。そのためには、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)などを介したオープンな基盤整備や、データガバナンスの共通ルールづくりも必要だ。

◇収益を最大化し地域活性の起爆剤に

現在のZOZOマリンスタジアム


A この流れに乗るかどうかで、10年後の業界の姿が変わってくるかもしれないね。話は変わるけど、プロ野球・千葉ロッテマリーンズの本拠地「ZOZOマリンスタジアム」の再整備が動き出した。

D 千葉市によると、新施設は野球場だけでなく、エンタメや宿泊、商業などを複合した「エンターテインメントスタジアム」を目指すという。計画地の幕張新都心では新駅が開業しているし、周辺には大規模商業施設や幕張メッセも立地していて、一つのまちづくりとも言えるだろう。

E 多機能スポーツ施設を軸としたまちづくりが各地で広がっている。神奈川県でも、県内に複数のプロスポーツチームを保有するDeNAが、スタジアムやアリーナなどのスポーツ施設を核とした周辺のまちづくりに取り組んでいる。

D 首都圏だけでなく地方でも活況だ。サッカーJ3・いわきFCは、5階建てのビルや多目的広場を併設する新スタジアムの建設を構想している。京都府では伊藤忠商事を代表とする企業コンソーシアムが新アリーナを建設する。Bリーグ「京都ハンナリーズ」のホームアリーナとしての活用のほか、スポーツ・文化のイベントにも対応が可能だ。

A 単なるスポーツ施設にとどまらないのは、建設費や維持管理費を賄うための収益が必要だからだ。スポーツ観戦では物販や飲食と組み合わせ、オフシーズンには音楽イベントなどを開催するなど、あの手この手で収益を最大化しようとしている。

E JリーグやBリーグには、上位リーグへの参入条件として、一定基準を満たすホーム施設の整備が求められている。地元で根付き、育ったチームの、さらなる活躍の場として新施設を建設するというケースが多い。チームが盛り上がれば地域経済の活性化やにぎわいの創出につながる。地域活性の起爆剤としての役割が期待されている。

 

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