【記者座談会】強靱化実施中期計画が閣議決定/熱中症対策を義務化 | 建設通信新聞Digital

6月14日 土曜日

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【記者座談会】強靱化実施中期計画が閣議決定/熱中症対策を義務化

◇20兆円強からの積み上げへ業界活動が鍵に

国土強靱化中期計画では、予算を確保するための措置が必要とする指摘もある


A 国土強靱化実施中期計画が閣議決定された。2026年度からの5年間の事業規模はおおむね20兆円強程度と、これまでの5か年加速化対策の15兆円を上回る規模が確保された。

B 閣議に先立ち開かれた国土強靱化推進本部で石破茂首相は「国土強靱化の着実な推進に向けて、関係府庁が一丸となって強力に取り組みを進めてほしい」と確実な施策実行に意欲を示した。

C 事業規模は、今後の資材価格、人件費高騰の影響を適切に反映するとした点も大きなポイントと言える。毎年度の予算編成過程でさらに積み上げていく予定だ。

D 業界団体からは、人件費と資機材高騰、激甚化する自然災害やインフラ老朽化に対応するため、20兆円を超える規模の予算を確保する必要があるとする声が相次いで上がっている。全国建設業協会の今井雅則会長が「強の部分がどこまでになるか、これからのわれわれの働き方が重要になる」と強調したように、今後の業界の活動も鍵になりそうだ。

B 強靱化推進会議では、14年の南海トラフ地震防災対策推進基本計画で死者8割減の減災目標を掲げて施策を進めたが、全く達成できていないことが最大の課題との指摘も出た。南海トラフの新被害想定が3月発表のため、今回の中期計画に反映は難しかったと思うが、修正できるタイミングがあれば書くべきではとの意見があった。

C 中期計画には、事業の進捗(しんちょく)管理と財源確保方策の検討を始めることも記載した。道路特定財源ではないが、強靱化予算を確保するための何らかの措置が必要とする指摘もある。計画が着実に国土の強靱化につながるよう、今後の施策展開を注視したいね。

◇さまざまな対策組み合わせ酷暑乗り切る

A ところで、これから本格的な夏を迎えるけれど、職場での適切な熱中症対策を講じることが1日から企業に義務付けられた。

E 温度や湿度を踏まえた暑さ指数(WBGT)28以上か気温31度以上の環境で連続1時間以上の作業などの条件に該当する職場が対象となる。建設業は24年の熱中症災害での死傷者数が216人と主要8業種の中で2番目に多く、死亡者数は最も多い。特に対策に力を入れるべき業界だ。

B 鉄骨や温度が70-80度にもなる舗装のアスファルト、それらに囲まれて空調も効かない環境で体を動かして働く夏季の現場の過酷さを聞いたことがある。

D 業界全体で対応強化に向けた多様な動きがある。戸田建設が開発した「背負い式大型冷却デバイス」など技術的なアプローチとともに、ダムの現場で熱中症対策の正しい知識を学ぶ講習会を開くなどの危機意識向上も急がれる。

E 建設業労働災害防止協会は、厚生労働省と共同で今夏、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開する。全ての職場で基本的な熱中症対策の実施を広く呼び掛け、事業者には重点的な対策を講じるよう徹底する。

D 日本型枠工事業協会は、7月下旬から8月お盆休み明けまでの約3週間、猛暑日が続く地域を対象に建設工事の作業を休止する提案を今後公表する。熱中症対策として命を守ることを最優先にする一方で夏の長期休暇という新たな魅力を打ち出す目論見だ。

C 1日から全国安全衛生週間の準備期間が始まり、各地で企業・団体の安全大会が連日開催されている。熱中症対策では例年以上に力の入った呼び掛けが増えている。

D さまざまな努力を組み合わせ、近年続くこの異常な夏の暑さを乗り切ってみんなで無事に秋を迎えたいね。

 

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